フィッシャー式を逆さに見る理由

以前小生がフィッシャー式逆さ眼鏡派と呼んだ人たちが、どうして低金利からデフレへの因果関係を導き出してしまうかについて、デロングブログのコメントでロバート・ワルドマンが以下のように解説している(デロングはここここでそのコメントを改めてハイライトしている):

I'm going to be very pedantic. do the techniques of modern macro lead Williamson to include that low interest rates must lead to deflation ? Yes indeed they do, because one of those techniques is assuming a steady state and another is linearizing around it.

The core assumptions of taste and technology do not imply a steady state (let alone a unique steady state). But assuming one is, like assuming rational expectations, standard practice.
(拙訳)
非常に学者ぶった話をさせてもらおう。現代マクロ経済学の技法が、低金利はデフレを必然的にもたらすというWilliamsonの見解を導いているのか? その答えは確かにイエスだ。というのは、そうした技法の一つは定常状態を仮定することであり、もう一つはその周囲での線形化だからだ。
嗜好と技術に関する中核の仮定からは、定常状態(ましてや唯一の定常状態)は導かれない。しかしそれを仮定することは、合理的期待の仮定と同様、標準的なやり方になっている。


ワルドマンがこのコメントを寄せたエントリは、クルーグマンとStephen Williamsonのマクロ経済学を巡る論争*1を取り上げたノアピニオン氏にデロングが反応したもので、そこでデロングはWilliamsonの間違いを示す例証の一つとして、2年前のAndy Harlessのブログエントリにリンクしている。「傘が雨を降らせるのか?(Do Umbrellas Cause Rain?)」と題されたそのHarlessエントリは、コチャラコタがフィッシャー式逆さ眼鏡派の見解を打ち出したことを批判したものだが*2、そのエントリのコメント欄にStephen Williamsonが姿を現し、コチャラコタは正しくHarlessは間違っている、と主張した。それを今回デロングが槍玉に挙げたわけである。

*1:Williamsonの関連エントリはここここで邦訳されている。

*2:そのコチャラコタ発言を巡る騒動についてはここでリンクしたRajiv Sethiのブログエントリが詳しい。