コント:ポール君とグレッグ君(2012年第11弾)

マンキューがクルーグマンの矛盾を指摘している。

グレッグ君
僕とポール君は良く意見が食い違うが、大抵は彼の言うことを理解できる。しかしこのところ、彼の債券市場への見方が分からなくなった。最近のエントリで彼は、オバマ大統領は長期的な財政の不均衡の対処を誤ると金利の急上昇を招きかねないと信じている、と論難している。しかし2003年には、その時の財政不均衡は今よりずっと小さかったのだが、金利の急上昇を心配していた。その2つの見解の整合性をどう考えれば良いのか分からない。ポール君は債券市場がどう動くかについての意見を2003年以降に変えたのかな? それとも今は状況が違うのかな? どちらかと言えば、今の方が財政状況は悪いので、2003年時点の論理がより強力に効くことになると思うんだが? 訳が分からん。
ポール君
財政赤字金利に関する僕の2003年の警告で尻尾を掴まえてやったぞ、というわけだね。ただ、僕はとっくにその過ちを認めていたのだな。当時の僕は、米国がバナナ共和国みたいに振舞い出したから、債券市場も米国への信頼を失うだろう、と思ったのだが、市場は、米国は最終的には責任ある振る舞いをするだろう、と見ていたようだ。そうして僕は短期予測を間違えた、というわけさ。


実は後のクルーグマンの反応は今回のマンキューに対するものではなく、今年初めのアレックス・タバロックに対するもの。タバロックはそこでヘリテージ財団の見解に対する1/2付けのクルーグマンの批判と、上でマンキューがリンクした2003年のクルーグマンの見解の齟齬を突いていた。ちなみに、クルーグマンが後者の過ちを認めた2010/9/1付けエントリでは、彼がこれまでに犯したもう一つの過ちとして、90年代の生産性の上昇を本物だと認めなかったことを挙げている。



[12/29追記]
デロングは、状況が違う、それはマンキューも分かっているはずだ、としてマンキューを批判している。再追記:Economist's Viewのまとめエントリ


[12/31追記]
クルーグマンも12/30に漸く反応し、事態が予想通りに展開しなければ考えを変えるのは当然、それをしない人こそが問題、と書いている*1(H/T okemosさんツイート)。一方、マンキューは元のエントリに追記し、状況が違うという説明も間違いを認めたという説明も納得できない*2、2003年も金利はゼロ下限に近い1%まで下がったのだし、間違いを認めたからといって今はその可能性を認めないと確言できる理由にはならない、と書いている*3

*1:これは当然、3年前にここで引用したケインズの有名な台詞「When I receive new information, I change my views. What do you do, sir?」を意識しているものと思われる。なお、Wikiquoteによると、ケインズの元の台詞は「When my information changes, I alter my conclusions. What do you do, sir?」で、一般に流布している台詞は「When the facts change, I change my mind. What do you do, sir?」との由。

*2:ここでマンキューは、それらの説明のソースを読者メールとしている。

*3:後者については上述のタバロックも同様のことを書いている。