やはり病気は経済発展の負担

少し前に地理的条件と経済成長の関係に関するアセモグル=ロビンソンとジェフリー・サックスの論争を紹介したが、サックス側に有利となるような研究をEurekAlert経由でEconomist's Viewが紹介している。


以下はそこで紹介されている27日に出版されたばかりのPLOSのオープンアクセス論文の著者要旨。

While most of the world is thought to be growing economically, more than one-sixth of the world is roughly as poor today as their ancestors were hundreds of years ago. The extremely poor live largely in the tropics. This latitudinal gradient in income suggests that there are biophysical factors, such as the burden of disease, driving the effect. However, measuring the effects of disease on broad economic indicators is confounded by the fact that economic indicators simultaneously influence health. We get around this by using simultaneous equation modeling to estimate the relative effects of disease and income on each other while controlling for other factors. Our model indicates that vector-borne and parasitic diseases (VBPDs) have systematically affected economic development. Importantly, we show that the burden of VBPDs is, in turn, determined by underlying ecological conditions. In particular, the model predicts that the burden of disease will rise as biodiversity falls. The health benefits of biodiversity, therefore, potentially constitute an ecosystem service that can be quantified in terms of income generated.
(拙訳)
世界のほとんどは経済的な成長を遂げたと思われているが、6分の1以上は100年前の先祖と大体同じくらい貧しいままに留まっている。極貧層の多くは熱帯地域にいる。こうした所得における緯度傾斜は、病気の負荷のような生物理学的な要因がそうした効果をもたらしていることを示唆している。しかし、広範な経済指標への病気の影響を測ることは、経済指標が同時に健康に影響を与えるという事実によって困難なものとなる。我々は、他の要因をコントロールしつつ、病気と所得がお互いに及ぼす相対的な影響を推計する連立方程式モデルを用いることにより、この問題に対処した。我々のモデルからは、媒介性および寄生性の病気が経済発展にシステマティックに影響を与えてきた、という結果が得られた。重要なのは、そうした病気の負荷が一方で生態学的環境によって決定される、ということが示された点である。具体的には、モデルは生物学的多様性が低下すると病気の負荷が高まることを予測している。従って、生物学的多様性の健康面でのメリットは、生み出される所得という形で定量化できる生態系サービスを構成している可能性がある。


論文ではアセモグル=ロビンソンやサックスの論文にも言及しており、(直近の論争はともかく)その辺りの議論を意識していることを伺わせている。EurekAlert記事では、政治・制度面の影響にこだわるのは冷戦時代の経済学、という著者の一人(ハーバード・メディカル・スクールの経済学者Matthew Bonds)のアセモグル=ロビンソンに喧嘩を売るような発言も伝えている。一方、Economist's ViewのMark Thomaは、自分の専門外なので開発経済学者の評価を求む、という慎重な書き方をしている。