最近、デビッド・ベックワースが示した以下の図を巡ってちょっとした論争があった。
各人の言い分を乱暴にまとめると、以下のようになる。
- ベックワースのノアピニオン氏への反論(元エントリの追記)
- 金融政策におけるサーモスタット理論が成立するほど財政政策は機動的でない。
- クルーグマン
- ノアピニオン氏の言う通り。ただ、これを以ってノアピニオン氏が我々の無知を嘆いたのは行き過ぎ。財政政策の効果を示す実証研究は積み重なっている。
- タイラー・コーエン
- サムナーとベックワースはFRBは常に名目GDPを制御できると考えているようだが、自分は信用崩壊が発生した時期(2008年から2009年に掛けての時期)はうまく制御できなかったと考えている。しかし、いわゆる流動性の罠の時期には制御できたと考えている。財政政策が2010-2012年の期間に名目GDPを均したとは考えにくい*4。
*1:ベックワースは、財政政策と金融政策の関係について、サムナーの自分の娘との腕相撲の比喩を何回か引用したことがあり(ここ、ここ、ここ)、基本的にはサムナーと見解を一にしていると思われる(この比喩の日本語での紹介はこちらのtwilogの10:16:51と10:17:24を参照。また、サムナーの見解については例えばここ参照)。
*3:ここでサムナーが、市場マネタリストの同志であり上注に記したように財政政策と金融政策との関係について意見を同じくするベックワースではなく、ノアピニオン氏の肩を持ったのは意外に思われるが、ベックワースの示したグラフからは何も言えない、という点に焦点を絞った反応と思われる。
*4:曖昧な言い方であるが、ここでコーエンは上でベックワースが指摘した財政政策の機動性の問題を念頭に置いているものと思われる。