今日の循環的失業者が明日の構造的失業者になる?

という主旨の記事が12/2のEconomixに上がっていた(原題は「Will Today’s Unemployed Become Tomorrow’s Unemployable?」)。

そこでは、シカゴ大のRobert Shimerの2008年の論文「The Probability of Finding a Job」から以下の図が引用されている。

これは失業期間と翌月に職を見つける確率の相関図である。Shimerの分析によれば、失業期間が1週間ならば51%の確率で翌月に仕事を見つけることができる。また、失業期間が6ヶ月以内ならば、仕事を見つける確率は平均して31%となる。しかし、6ヶ月以上1年以内ではその確率は19%まで低下し、1年を超えると14%となる。


なお、上のShimerの図は今回の大不況の前のデータ(1976.1〜2007.10)を用いているので、ニューヨークタイムズが最新のデータを基に改めて描画し直してみたのが下図である(ただし、Shimerの図は失業の直前まで働いていた人のみを対象にしていたのに対し、下図は新卒や労働市場に復帰した人も含んでいる)。

この図でも、Shimerが示した傾向が確認できる。


長期失業者が就職しにくくなる理由について、記事では以下のように分析している。

  • 確かに短期失業者と長期失業者はそもそも労働者としての質に差があるのかもしれない。質が高い労働者は、失業期間も短期で済むだろう。
  • しかし、失業経験自体が労働者の雇用機会を損ねるということもあるのではないか。というのは
    • 履歴書の空白の期間が長ければ、なぜ誰も今まで雇わなかったのか雇用者は訝しみ、警戒するだろう。これはいわゆる逆選択の問題である。
    • 雇用者はまた、失業期間中にテレビや睡眠に多くの時間を費やす生活を送ったことにより労働の習慣が失われているのではないか、という点も懸念するだろう。
    • 失業者は鬱や自尊心の低下にも苦しむ傾向があり、それは面接で不利に働くだろう。
    • 技能や人脈の衰えも効いてくるだろう。ハイテク産業のような動きの激しい業界では、技能の低下は特に顕著に効いてくるだろう。
  • 景気が良くて労働需給がかなり引き締まった状況ならば、雇用者も選り好みする余裕があまり無く、労働者側の市場性の問題もあまり効いてこないかもしれない。
  • しかし、1980年代の欧州では長期失業の影響は恒久的とも言える形で残り、8〜9%の失業率が当たり前になってしまった。
  • クルーグマンThomaコーエンは、循環的失業か、それとも構造的失業か、という点について議論を交わしてきたが、循環的失業が構造的失業に転化する、という可能性を見逃しているのではないか。