労働市場の制度が硬直的とされるフランスについて失業率の景気循環的な変化の要因分解を行った研究がEconomic Logicで紹介されている。著者はJean-Olivier Hairault、Thomas Le Barbanchony、Thepthida Sopraseuthというフランスの研究者で、論文の原題は「The cyclicality of the separation and job finding rates in France」。
以下は論文の結論の冒頭部。
The contribution of the job finding rate amounts to about two-thirds of the unemployment dynamics. The French labor market is not so far from the US labor market as analyzed by Shimer (2012), as far the cyclicality of the job finding and separation rates is concerned. This is quite surprising, as the French labor market has much lower turnovers on average than the US, and institutions such as unemployment insurance and employment protection are far more prevalent in France than in the US. Does it mean that labor market institutions matter less for cyclical adjustments than for equilibrium unemployment? Instead of giving a highly hypothetical answer at this stage, we favor the idea that more theoretical work must be done in the future on this issue.
(拙訳)
失業率の動きに対する就職率の寄与はおよそ2/3に達する。就職率と離職率の景気循環的な動きに関する限り、フランスの労働市場はShimer(2012)の分析した米国の労働市場とさほど変わらない。フランスの労働市場の回転が平均的に米国よりかなり低いこと、および、失業保険や雇用保護といった制度が米国よりフランスの方が行き渡っていることを考えると、これは非常に驚くべき結果と言える。このことは、労働市場において制度が景気循環的な調整に及ぼす影響は、均衡失業率に及ぼす影響よりも小さいことを意味するのだろうか? 現段階ではかなり仮想的な仮説にとどまる回答を述べる代わりに、この問題については今後理論的な研究が行われるべき、と言っておくことにしたい。
ここで注意しておくべきは、Shimerの分析は、米国では離職率の失業率への寄与が高いという労働市場分析の主流派の見方に異議を唱えるものになっている点である。従って、主流派の立場から見れば、上記論文の結果はむしろ米仏の制度の違いが労働市場に与える影響を立証するもの、ということになる(実際、Economic Logicはそうした立場からこの論文を紹介している)。