国際通貨基金がインターナショナルを歌う日?

A Fistful of Eurosに面白いエントリが上がっていた(Economist's View経由)。内容は、IMFのMichael KumhofとRomain Ranciéreによる最近のワーキングペーパーの紹介。

その概略は以下の通り。

  • 論文の著者たちは、以下の要因を盛り込んだDSGEモデルを提示した:
    • 上位5%の所得層はなぜか富を誰よりも尊び、特にトリプルAの資産を欲しがる。
    • その資産は金融部門により仲介される。
  • そのモデルを用いて、労働者の交渉力に負のショックが加わり、所得分布がシフトした場合のマクロ経済シミュレーションを行った。その結果:
    • 金融部門が膨張した。
    • 民間負債の総計が大きく拡大した。
    • 短期的には、信用供与が平均賃金上昇の代わりを果たした。
    • 最後には、大いなる金融危機と深刻な景気後退が訪れ、財政が破綻した。
  • 横這いの実質賃金、上位5%が得る国民所得の比率の増加、金融部門の飛躍的成長、信用に基づく消費ブームは、まさしく過去30年間のマクロ経済で起きたことである。また、その後の経過は、昭和天皇終戦詔勅の言葉を借りれば、経済環境必ずしも好転せず、という状況に見える。
  • KumhofとRanciéreは、幾つかのシナリオを提示した:
    • 政府が巨額の財政赤字によって実体経済への危機の衝撃を最小化する。それによってGDPの低下は抑えられ、家計の債務を減らすだけの成長が確保できる。
    • ひたすら痛みに耐える。それによって債務比率はむしろ悪化し、所得は低下し、債務の総額は減らない。
    • 債務再編。要は全般的な債務不履行と破産のことだが、それによって安上がりに債務負担を減らすことができる。また、巨大銀行は終焉を迎える。というのは、銀行救済は経済再構築につながらず、単に負債を民間部門から公的部門に移し替えるだけだからである。このシナリオは「刺激策+クラムダウン」とでも言うべきものである。
    • 労働の所得分配率を上げる。このシナリオが債務比率をより速く、大きく、継続的に減少させ、危機発生の確率も減らした。
  • 彼らはまた、経済格差と金融部門の増大と債務の増加のメカニズムが、グローバル・インバランスをももたらした、と論じている。ただ、実際にモデルをそこまで拡張するまでには至っていない。


このように論文を紹介した上で、A Fistful of EurosのAlex Harrowellは、以下のように冗談混じりにエントリを締めている。

I’ve waited for this moment, 752 words on, to mention the key detail: this cell of dangerous subversive Bolsheviks is embedded in the International Monetary Fund, and their poisonous hate-writings were published as an IMF Working Paper. Perhaps DSK really has had an influence on the institution? In other optimistic news, both IFO and the German Chambers of Commerce expect significantly stronger internal demand next year and a smaller trade surplus, while Daimler Benz’s CEO is promising that this year’s profit share payments will be “attractive”.
It better be…
(拙訳)
ここまで752語を費やしてきたのは、事の核心を突くためだ。つまり、この危険で破壊的なボルシェビキの下部組織は国際通貨基金に潜伏していて、彼らの有害で憎悪に満ちた文書がIMFワーキングペーパーとして出版されたのだ。ひょっとすると、ドミニク・ストロス・カーンは本当にこの機関に影響力を持っているのかも? 別の明るいニュースを紹介しておくと、IFOとドイツ商工会議所が共に、来年の内需が顕著に力強いものとなり、貿易黒字が縮小する、と予測する一方で、ダイムラーベンツのCEOが今年の利益配分は「魅力的な」ものになる、と約束した。
そうなるべきなのだ…。