サービスのディスインフレは長引く

という主旨のセントルイス連銀の論考をMostly Economicsが紹介している。原題は「Historical Disinflation Episodes: Which Falls First, Goods or Services?」で、著者は同銀のCharles S. GasconとJoseph Martorana。
以下はその冒頭。

Annual inflation in the U.S. has slowed over the past year, decreasing by 2.9 percentage points from February 2023 to February 2024 and settling at 2.5%, as measured by the personal consumption expenditures (PCE) price index. Despite progress toward the Fed's 2% target, FOMC participants in March 2024 projected only a 0.4-percentage-point drop in PCE inflation over the coming year. Why is progress toward 2% inflation expected to slow? Historical experience—specifically, disinflationary episodes of the early and late 1980s—suggest that goods price inflation tends to fall quickly, while the last mile of disinflation is driven primarily by a lengthier disinflation of services.
(拙訳)
米国の年間インフレは過去1年に鈍化し、個人消費支出(PCE)物価指数で測定すると2023年2月から2024年2月に掛けて2.9%ポイント低下し、2.5%にまで沈静化した*1FRBの2%目標に向けて進展があったものの、2024年3月のFOMC参加者は次の1年間にPCEインフレが0.4%ポイントしか低下しないと予測した*2。2%インフレに向けた進展はなぜ鈍化すると予想されているのか? 過去の経験、具体的には1980年代初めと終わりのディスインフレの時期が示すところによれば、財価格インフレは急速に低下する傾向がある半面、ディスインフレの最後の行程は、それよりも長く掛かるサービスのディスインフレによって主に決定される。

この論考では2つの図を示している。以下は最初の図。

この図の説明は概ね以下の通り。

  • 歴史的に、エネルギーと財のインフレの変動が最も大きく、それぞれ寄与度は最大6.3%ポイント程度であった。
  • 1980年代初めと終わりにおけるのと同様、エネルギーと財のインフレが、総合インフレが2022年6月の直近のピークに到達する要因になった。それぞれゼロ近傍から2.4、2.3%ポイントにまで拡大した。
  • サービスインフレの変動は財インフレより小さく、寄与度は通常1~4%ポイントの範囲であった。
  • 住宅インフレはより安定的で、1992年以降の寄与度は0.5%ポイント近辺で推移した。ただし2023年4月には1.3%ポイントに達した。

以下は2番目の図。

この図の説明は概ね以下の通り。

  • 財とサービスのディスインフレは住宅のディスインフレに先行する傾向がある。
    • 1980年には、財とサービスのディスインフレは総合インフレのピークから3か月以内に始まったが*3、住宅インフレはピークの8か月後も上昇を続けていた。
    • 1989年も、住宅インフレが財とサービスのインフレがピークを付けたおよそ17か月後にピークを付けた*4
    • 現在も概ね同様。ただし住宅とサービスのインフレのピークは共に財のインフレのピークに大きく遅れた(それぞれ12か月と8か月)*5
  • サービスのディスインフレは住宅や財のディスインフレより長引く。
    • 住宅と財が長期平均に戻るのに掛かる時間は同程度。1980年にはそれぞれのピークの23か月後に常態に戻ったのに対し、サービスは33か月掛かった。その際、サービスも財もインフレ率は約5%ポイント低下したので、これはサービスがより大きなディスインフレを要したためではない。
    • 1989年には財とサービスは約3%ポイント低下したが、やはりサービスの方が時間が掛かった。
    • 現在は、直近のそれぞれのピークから12か月後を比較すると、財のインフレが3%ポイント下がったのに対し、サービスの低下幅は1.2%ポイントに留まる。

*1:2023年2月の上昇率は5.2%なので(cf. 最新のデータで計算、昨年10月時点の公表資料のtable7も同じ伸び率)、2.7%ポイントの低下?

*2:原注:See the difference in Q4 year-over-year inflation projections for 2023 in the December 2023 Summary of Economic Projections and for 2024 in the March 2024 Summary of Economic Projections.

*3:図を見る限り(=各コンポーネントが1で基準化された時点を見る限り)、総合インフレのピークはt=10近辺の模様。ただし実際のデータは1980年3月(t=2)にピークを付けており、6か月移動平均を取ってもピークは1980年7月(t=6)となる。図の注で示唆されているように総合インフレについて公表値ではなく非加重平均で再計算したものを使用していることでそうした差が生じているのかもしれない。

*4:図を見る限り、総合インフレのピークはt=21近辺の模様。実際のデータは1990年10月(t=18)にピークを付けており、6か月移動平均を取るとピークは確かに1991年1月(t=21)となる。

*5:図を見る限り、総合インフレのピークはt=12近辺の模様。実際のデータは上述の通り2022年6月(t=11)にピークを付けており、6か月移動平均を取るとピークは確かに2022年7月(t=12)となる。