昨日計算した動学的ファーマン比率の生産関数にコブ=ダグラス関数f(k)=kαを当てはめると、ファーマンやコクランが計算したのをマンキューが紹介しているように、その式は
dw/dx = (1-α) / (1- α - t)
となる。これに一般的な値としてα=t=1/3を当てはめると、dw/dx = 2となる。
一方、デロングも動学的ファーマン比率*1をコブ=ダグラス関数で計算しており、
dw/dx =1 / (1− [{t/(1−t)} * {r/{α(1−α)}} * {k/y}])
という結果を導いている(ここでy=f(k))。
一見すると相異なる結果が導かれたように思われるが、実は両者は同じである。というのは、収益率rと資本の限界生産物の関係について、r=(1-t)dy/dk という前提があるからである。デロングの結果にその前提(ならびにy=kα)を代入すると
dw/dx = 1 / (1− [ {t/(1−t)} * {(1-t)αkα-1/{α(1−α)}} * {k/kα} ])
= 1 / (1− {t/(1-α)})
= 1 / {(1−α-t)/(1-α)}
= (1-α) / (1−α-t)
となる。
なお、デロングがこの結果を示したエントリは、今までの議論のまとめを意図しており、クルーグマンの図を援用する形で以下のように各項目を図示している。
ただしマンキューがrで表した外生的な収益率はr*とアスタリスクを付けている。また、マンキューの税収xはTR(tax revenueの略)と表現しており、上図のxは別の意味(死荷重)で使っている。さらに、クルーグマンに倣って、税率τを実際の収益率と税引き後収益率の差(tax wedge)として定義し直している。マンキューの税率tとの関係は
τ = tr*/(1-t)
となる。
デロングは各領域を以下のように説明している。
- A … 当初利益 π = r*k0
- B … 当初税収 TR = τk0
- C … 当初賃金([MPK - (r*+τ)]の0からk0までの積分)
ここで減税dτが発生すると(dτ<0)、
- 生産=所得=yはx+v+zだけ増大
- zは利益に帰属
- vは税収に帰属
- xは賃金に帰属
- qは税収TRから賃金wに移転
x〜o(dτ2)、他の領域はo(dτ)なので、dτ→0 の時xは無視できる。すると、
dπ=r*dk (領域z)
dTR=kdτ+τdk (領域q(<0)+領域v(>0))
dw=-kdτ (領域q)
となる。
従って、
dTR/dw =-(1+τdk/kdτ)
である。
これにコブ=ダグラス関数ならびに収益率r*と資本の限界生産物との関係に関する前提を当てはめて導いたのが、先のデロング版ファーマン比率ということになる*2。