共和分と単位根に関する出版された結果のほとんどが虚偽である理由

共和分を批判した表題の論文を読んで、Dave Gilesが激おこぷんぷん丸になっている。論文の原題は「Why Most Published Results on Unit Root and Cointegration are False」で、著者はアルゴマ大のHari S. LuitelとGerry J. Mahar。
以下は論文の要旨。

The method of cointegration analysis for modeling nonstationary economic time series variables has become a dominant paradigm in empirical economic research. Critics argue that a cointegration analysis produces results that are, at best, useless and, at worst, dangerous. In this research, we explain why and how the use of a cointegration analysis in economic research will likely lead to findings and subsequent recommendations for public policy that will be unsound, misleading and potentially harmful. We recommend that, except for pedagogical review of policy failure of a historical magnitude, this method not be used in any analysis that affects public policy.
(拙訳)
非定常的な経済の時系列変数をモデル化する際の共和分分析の手法は、実証経済学研究において支配的な枠組みとなっている。批判者たちは、共和分分析の生み出す結果は良くて無益、下手をすると危険である、と論じる。本研究では、経済学研究における共和分分析の使用が、いかにして不健全であり人を惑わせ有害なものとなる恐れのある公共政策に関する発見ならびに提唱につながりやすいか、およびそうなる理由を解説する。我々は、政策の歴史的な大失敗を教育的な観点からレビューする場合を除き、この手法が公共政策に影響するいかなる分析にも使われないことを推奨する。


Gilesは、結論部から以下の2つの文章を引用している。

In summary, three analogies between cointegration analysis and a sandcastle may be appropriate. First, a sandcastle may be built on sand, so it falls down because the foundation is not solid. Second, a sandcastle may be badly built. Third, a sandcastle built on seashore with a bad design may stay up but will not withstand the ebb and flow of the tides. The cointegration analysis, like a sandcastle, collapses on all three counts. In several planned research publications, we will report the criticism of research outcomes (results) and the methods employed to obtain such results. Below we provide one example why a research finding using the methodology of cointegration analysis to be false. (pp.11-12)
(拙訳)
まとめとして、共和分分析と砂の城の間の3つの類似性を挙げるのが適当だろう。第一に、砂の城は砂の上に立てられるであろうことから、基礎が頑丈ではないために倒れる。第二に、砂の城は建て方が悪いかもしれない。第三に、悪しき設計で海岸に建てられた砂の城は、立っていたとしても、潮の満ち引きには耐えられまい。共和分分析は、砂の城と同様、3つの点すべてにおいて破綻する。今後公表を予定している幾つかの研究において我々は、研究成果(結果)ならびにそうした結果を得るために用いられた手法への批判を報告する。以下で我々は、共和分分析手法を用いた研究の発見が虚偽である理由を示す例を一つ提示する。

In the name of science, cointegration analysis has become a tool to justify falsehood -- something that few people believe to be true but is false. We recommend that except for a pedagogical review of a policy failure of historical magnitude, the method of cointegration analysis not be used in any public policy analysis. (p.14)
(拙訳)
科学の名において、共和分分析は虚偽――少数の人々が真実だと信じているが、実際には虚偽であるもの――を正当化する道具となった。我々は、政策の歴史的な大失敗を教育的な観点からレビューする場合を除き、この手法が公共政策に影響するいかなる分析にも使われないことを推奨する。


Gilesは、この論文はあまりにも多くの点であまりにも馬鹿げているので、まともに批判する気にもならない、と匙を投げている。さらに、批判は自分の時系列計量経済学のコースを受講している学生に任せようか、彼らは私よりも忍耐力があるだろうから、と皮肉っている。
Gilesに言わせれば、著者たちは、ある理論的結果が(彼ら自身の手になる)拙劣な一片の実証によって損なわれる、という大雑把な主張をしているに過ぎず、タイトルで打ち出した大胆な主張を裏付けるまともな実証結果は一切提示していない、とのことである。