1年前に「Diagnosing the Italian Disease」というWPをルイジ・ジンガレスがUCLAのBruno Pellegrinoと共著している(Mostly Economics経由の「Mercatus Center/Conversations with Tyler」経由)。
以下はその要旨。
We try to explain why twenty years ago Italy’s labor productivity stopped growing. We find no evidence that this slowdown is due to the introduction of the euro or to excessively protective labor regulation. By contrast, we find that the stop is associated with small firms’ inability to rise to the challenge posed by the Chinese competition and to Italy’s failure to take full advantage of the ICT revolution. Many institutional features can account for this failure. Yet, a prominent one is the lack of meritocracy in managerial selection and promotion. Familism and cronyism appear to be the ultimate causes of the Italian disease.
(拙訳)
我々は、20年前にイタリアの労働生産性が成長を止めてしまった理由の説明を試みる。この減速が、ユーロの導入や、過度に保護的な労働規制のせいだという証拠は見つからなかった。その一方で我々は、伸びが止まったのは、中小企業が中国との競争という難題にうまく対処できなかったことと、イタリアがIT革命を十分に活用できなかったことに関連していることを見い出した。多くの制度的特徴がこの失敗の説明要因となる。その中でも顕著なのは、管理者の選抜と昇進における実力主義の欠如である。家族主義と縁故主義がイタリア病の究極の原因のように思われる。
この論文に触れたタイラー・コーエンとの座談会の中でジンガレスは、イタリアの喫茶店を引き合いに出している。曰く、コーヒーについてはイタリアが強みを有しており、かつ、個々の店の生産性はスターバックスの5倍くらい高いにも関わらず、世界市場でスターバックスの席巻を許しているのは、イタリアの喫茶店では店主が目を光らせていないと店内で横領が横行してしまう、という極端なエージェンシー問題のせいだとの由。そのため、店を大きくして規模の利益を追求することができないという。一方、スターバックスは、客や店員が注文内容を何度も繰り返す必要があるなど個店の生産性は劣るが、在庫等の管理が完全にコンピュータ化されていて全てがシアトルで把握できる体制になっているため、規模の効果が追求できるとの由。