前回エントリで触れたMichael Burdaフンボルト大学ベルリン教授のVoxEU記事では、エコノミストやFT、クルーグマンやサイモン・レン−ルイス*1といった米英のメディアや経済学者によるドイツ経済学者へのバッシングへの反論を試みており、特に以下の3つの論点を「神話」として取り上げている。
- ドイツの経済学はケインズ主義の考えを根本から否定している
- これについてBurdaは、悪名高い一般理論のドイツ語版の序*2を引っ張り出したほか、カール・シラーの戦後の再建計画を持ち出し、ドイツは総需要管理を重視してきた、と強調している。
- その上で、現在のドイツ政策当局が総需要管理に抵抗しているのは単に国益を優先しているため、という考察を示し、以下の2点を指摘している。
- さらに、以下の点を指摘している。
- ドイツの経済学者は「秩序自由主義」とサプライサイド政策を信奉している*4
- 秩序自由主義は政治的嗜好に過ぎず、経済学とは関係無い。
- サプライサイド政策について言えば、労働市場規制、社会保障制度、税制、および求職の効率性の変化が長期の生産性に影響する、ということを示した経済学の厳密な研究が存在する。
- 10年前のハーツ労働市場改革は、サプライサイド政策が実際に機能することを証明した。再統一後のドイツは、インフレによる名目賃金上昇や、明示的な増税が無いまま社会保障負担を増やしたことによる労働市場の歪みにより、競争力を大きく喪失し、欧州の病人と経済学者に呼ばれたが、2003年以降に雇用は13%増加した。
- 短期のケインズ的政策と長期政策との整合性を求めるドイツ人の態度は扱いにくいかもしれないが、ブードゥー経済学とは言えない。そうした態度が、ギリシャの改革を求める姿勢につながっている。
- ドイツの経済学者はモラルハザードと緊縮に取りつかれている