反ケインズ主義とは何を意味するのか?

というブログエントリを7/19にジョン・テイラー書いている
彼は4/19エコノミスト記事で反ケインズ的と呼ばれたが、当時その記事に対し、代表的なニューケインジアンであるテイラーを反ケインズというのはおかしいではないか、とDavid Altigクルーグマンが批判を浴びせた。このエントリは、その一件に関する彼なりのまとめである。なぜ3ヶ月経って突然その話を蒸し返したかというと、Russ Robertsのポッドキャストインタビューでその話を持ち出されたのがきっかけとの由。


テイラーはまず、ケインズが経済学で現実社会を描写するに当たって強調したことと、無視したことを挙げている。

このうち、前者の価格や賃金の硬直性を取り入れることの必要性については、テイラーは全面的に認めている。


次にテイラーは、政策面でのケインズ主義の特色と、自分の考えるあるべき政策を以下のように対比させている。

  • ケインズ主義的政策
    • 政府官僚による反景気循環的な政策行動や介入により景気後退を抑止ないし緩和する、もしくは景気回復を早める。
  • テイラーの考えるあるべき政策
    • 金融政策におけるテイラールールや財政政策における自動安定化装置といった、裁量とは正反対のルールに基づく政策。

この意味では、反ケインズ的というエコノミスト誌の描写は当たっている、とテイラーは認める。また彼は、過去3年間の経緯は裁量的なケインズ政策が効かないことを改めて実証した、と述べている。


最後に彼は、ケインズの経済学や政治への影響を論じたフリードマンのエッセイから、ケインズの政治的遺産と経済学的遺産の区別を引用している。

  • 政治的遺産
    • 強力な政府官僚による裁量的行動の提唱。
  • 経済学的遺産
    • 景気循環変動の源泉として総需要を強調したこと。

フリードマンによると、上記のうち政治的遺産は非常な害をなすものだったが、経済学的遺産には多くの重要な洞察が含まれていたとの由。
これからテイラーは、価格硬直性を取り入れた合理的期待モデルを使うことやルールベースの政策対応を求めることは、反ケインズ主義的という立場と矛盾しない、と自分の立ち位置を整理している。