マクロ経済学はどこまで進んだか/まとめ

昨日まで7/7エントリで紹介した本のまとめを一日一人ずつアップしてみた(ゲリラ一号さんにTBを頂いた。多謝)。
このまとめは以前に行なったものだったが、それぞれの経済学者の意見をまとめてみる、というよりは、それぞれの経済学者にぶつけられた共通の質問に各人がどう答えたか、を比較対照してみる、という観点でまとめてみたものである。そのため、Excelシートの縦の行に経済学者、横の列に質問、というマトリックス形式にしていた。ピックアップした質問は以下の19個。

ただ、すべての経済学者に上記の質問がぶつけられたわけではないので、該当する質疑応答が無かった場合は略してある。また、やはりあくまでも会話の中からそうしたポイントを抜き出していったので、文脈がわからないといまひとつ意味が取りにくい面はあるかもしれない。そのほか、7/7エントリで指摘した誤訳の問題もあるので、より深く発言の内容を知りたい方は原書を読んでいただいた方が良い、ということは(当然のことであるが)お断りしておく。
(あるいは、きちんとした翻訳で再版していただければそれに越したことはないのだが…。もし再版されるのであれば、おそらくこの本に所収されるはずでなぜかされなかったレイヨンフーブットへのインタビューも乗せてほしい)。
とはいうものの、今回のまとめからも各人の意見のエッセンスは拾えると思う。個人的には、ニューケインジアン、リアルビジネスサイクル、合理的期待形成仮説への評価の違いをはじめとする各経済学者の意見の振れ幅の大きさのほか、クラワーのやけに斜に構えた態度や、フリードマンの「日本の中央銀行の(1996年から)過去5年間の行動は、1929年以降のFRBの行動の物真似のようだった」という発言が面白かった。

なお、本書の書評を以前某所に書こうとした書きかけの原稿(冒頭部のみだが)があったので、最後におまけとして付けておく。
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本書は、ケインズ以後のマクロ経済学の代表的な12人の学者へのインタビュー集である。本書の特徴は、戦後の主な経済学派の代表的な人物を、新旧偏らずに取り上げている点にある。いわゆる「ケインズ革命」以後のマクロ経済学は、戦後のネオ・ケインジアンによるケインズ理論の発展の後、60年代終わりのマネタリストによる「ケインズ反革命」を経て、マネタリストの考えをさらに精緻化した70年代の合理的期待形成派の台頭、といったところが主な流れになっている。さらに、80年代には、合理的期待形成派から派生した実物的景気循環論(これらはまとめてニュークラシカルとも呼ばれる)、およびケインズ経済学にニュークラシカルと同様の精緻な基礎付けを施すことにより反撃を試みたニューケインジアンといった学派が登場している。本書では、それらの各学派の始祖とでも言うべき人物がインタビュー対象になっていることがまず目を引く。即ち、ネオ・ケインジアンからはトービン、モリジアニ、ソロー、マネタリストからはフリードマン、合理的期待形成派からはルーカス、実物的景気循環論からはプレスコット、ニューケインジアンからはマンキューが取り上げられている。また、ソローは成長理論の始祖でもあるが、内生的成長論と呼ばれる新しい成長理論をニュークラシカルの立場から提唱したローマーも本書のインタビューの対象になっている。それ以外に取り上げられているのは、ネオ・ケインジアンの均衡分析を批判してケインズ理論全盛期の終幕の先駆けとなったクラワー、ニュークラシカル以後に顕著な研究業績を挙げたブランシャール、テイラーの二人、および経済史学者のブローグである。