政府発表と異なるインフレ率を推計すると…

アルゼンチンでは罰せられる、というWSJ記事をタイラー・コーエンがMarginal Revolutionで引用しているMostly Economics経由)。以下はその引用部の拙訳。

アルゼンチン政府は独立系エコノミストへの弾圧をエスカレートさせ、ある経済コンサルティング会社のマネージャーを刑事告発した。

・・・同政府は、自分自身と顧客の利益のために「インフレのデータに関し誤った情報を流した」かどで、MyS Consultoresを告発した。その訴えによると、MySのデータはアルゼンチン債券市場の投機的な動きにもつながったという。

・・・国家統計局であるIndecによると、5月の消費者物価は1年前に比べて9.7%上昇した。しかし事実上すべてのエコノミストが、インフレは年率20%を超えている――これは世界で最も高い部類に属する――と述べ、インフレ問題を否定している政府官僚を怒らせた。

・・・当局は今年に入ってからこれまでに、少なくとも9つのリサーチ会社にそれぞれ50万ペソ(12.2万ドル)の罰金を科している。今週、2度目となる罰金をOrlando J Ferreres & Asociadosに科した。
「彼らは我々が物価がどれだけ上昇したかを述べたことで罰金を科しているのです」と自らの名前をつけた会社の経営者であるFerreres氏は言う。「彼らは我々皆に刑事罰を科すことができます。彼らがどこまでやるつもりなのか分かりません。」
Ferreres氏によると、こうした法的措置は、選挙の年に否定的なものとなり得る情報を独立系エコノミストが公表することを防ぐ戦略の一環だという・・・
政府当局は、エコノミストがIndecの消費者物価指数と大きく異なるインフレ推定値を流すことによって大衆を「騙し」、誤った経済的決断をさせることへの抑止効果を罰金に期待している、と述べている。
・・・
エコノミストたちは、歯止めの利かない財政支出、好況に沸く経済、および貨幣供給の拡大を、Indecの公表値の少なくとも2倍に達するインフレの原因として挙げている。
彼らはまた、20%から30%の賃金引き上げを含む団体交渉の合意を支持する度に、政府は暗に高インフレを認めているのだ、とも述べている。


このWSJ記事は有料だが、それを受けたビジネスインサイダーの記事がここで読める。それによると、当局は各社にインフレ推計手法を提出させ、それに欠陥があった、ということで罪に問うた、という手順を踏んだとの由。


またこちらの日本語サイトでは、アルジャジーラの報道という形でこの事件を報告している。