バーナンキの政策を巡る経済学者の4つの見解

についてデロングがProject Syndicateでまとめている(H/T Economist's View)。

  1. バーナンキ自身は、基本的には何も間違っていなかった、と考えているようだ。ただ、一時的な貯蓄過剰により、積極的な金融拡張策が完全な景気回復をもたらす時間を長引かせた、というのが彼の見解。即ち、損失回避的なソブリンファンドや、欧米に資金を置いている新興国の百万長者、および行動の自由を求める政府が完全雇用時の金利を著しく押し下げ、ショックが緩和する時間を長引かせた、との由。
  2. ケネス・ロゴフは、マネーサプライに焦点を絞った点でバーナンキは間違えた、と考えている。理論上はマネーマーケットが完全雇用均衡になれば、債務市場もそうなるが、実際にはそうではない。従って、政府がリスクの高い債務を買い戻して貸し手に損失を償却させるようにする方が効果的だった。そうした政策の方が、金融緩和策に比べ、民間支出をより押し上げて完全雇用をより急速に達成しただろう。
  3. 金融政策が十分でなかった、と主張する者もいる。FRBが2%より高いインフレ目標を掲げ、それを達成するのに十分な量的緩和をすると確約すれば良かった、と彼らは言う。
  4. サマーズやクルーグマンは、金融政策によって完全雇用が達成される証拠は乏しい、と論じ、戦略的な金融介入策によって経済ショックを相殺できる、というフリードマンの考えは見果てぬ夢だった、と言う。即ち、人口と生産性が成長していた過去半世紀の欧米の特殊な環境ではそれは可能に思われた、ということに過ぎない。クルーグマンは「インフレ率が上昇するということを誰も信じなければ、それは上昇しないのだ。インフレ率の上昇を少しでも確実にする唯一の方法は、金融のレジーム変更に爆発的な財政刺激策を付随させることである。」と述べたケインズもこの考え方に近い。