というNBER論文をダニ・ロドリックらが上げている(ungated版)。原題は「The New Economics of Industrial Policy」で、著者はRéka Juhász(ブリティッシュコロンビア大)、Nathan J. Lane(オックスフォード大)、Dani Rodrik(ハーバード大)。
以下はその要旨。
We discuss the considerable literature that has developed in recent years providing rigorous evidence on how industrial policies work. This literature is a significant improvement over the earlier generation of empirical work, which was largely correlational and marred by interpretational problems. On the whole, the recent crop of papers offers a more positive take on industrial policy. We review the standard rationales and critiques of industrial policy and provide a broad overview of new empirical approaches to measurement. We discuss how the recent literature, paying close attention to measurement, causal inference, and economic structure, is offering a nuanced and contextual understanding of the effects of industrial policy. We re-evaluate the East Asian experience with industrial policy in light of recent results. Finally, we conclude by reviewing how industrial policy is being reshaped by a new understanding of governance, a richer set of policy instruments beyond subsidies, and the reality of de-industrialization.
(拙訳)
我々は、近年とみに発展した、産業政策がどのように機能するかについて厳密な実証結果を提示している研究を論じる。それらの研究は、以前の世代の実証研究から大幅に改善している。以前の研究は概ね相関の話であり、解釈の問題で損われていた。全体として、最近の論文は産業政策についてより肯定的な評価を下している。我々は、産業政策の標準的な理論的根拠と批判を総括し、測定に関する新たな実証手法について幅広い概観を提示する。測定、因果推論、および経済構造に細心の注意を払った近年の研究が、産業政策の効果について如何に微妙で文脈に左右される理解を提示しているかを我々は論じる。我々は、最近の研究結果の観点から、東アジアの産業政策の経験を再評価する。最後に我々は、ガバナンスに関する新たな理解、補助金以外の豊富な一連の政策ツール、および脱工業化の現実によって産業政策が如何に変貌しつつあるかを概観して結論する。
効果の理解が文脈に左右される例として論文では、日本の産業政策が斜陽産業を支えることに注力していたことにより、対象部門の業績と負の相関を示していたことを挙げている。2011年のこちらの研究では、斜陽産業とそれ以外の産業では話が違うことが示されたとの由。
論文ではまた場所に基づく産業政策(cf. これ)についても論じているが、その成功例として2021年のこちらの論文で研究された日本のテクノポリス計画を挙げている。