反論ヒエラルキーとOSI参照モデル

mojix氏のZopeジャンキー日記の2008/4/13エントリで、ポール・グレアムが反論ヒエラルキーなるものを提唱していることを知った(9/19エントリ「属性攻撃は説得力を下げる」経由;原文はこちら、邦訳はこちら)。


それによると、ネット上での反論は、そのレベルによって以下の7段階に分類できるという。

DH0
罵倒(Name-calling): 「この低能が!!!」といったもの。発言者に対する罵倒。
DH1
人身攻撃(Ad Hominem): 論旨でなく、発言者の属性に対する攻撃。
DH2
論調批判(Responding to Tone): 発言のトーン(調子)に対する攻撃。
DH3
単純否定(Contradiction): 論拠なしに、ただ否定。
DH4
抗論(Counterargument): 論拠はあるが、もとの発言に対して論点がズレている。
DH5
論破(Refutation): 論破できているが、もとの発言の主眼点は論破できていない。
DH6
主眼論破(Refuting the Central Point): もとの発言の主眼点を論破できている。


この7段階を見て小生がふと連想したのが、同じく7つの階層からなる通信のOSI参照モデルe-wordの説明を引用すると以下の通り。

第1層(物理層)
データを通信回線に送出するための電気的な変換や機械的な作業を受け持つ。ピンの形状やケーブルの特性なども第1層で定められる。
第2層(データリンク層)
通信相手との物理的な通信路を確保し、通信路を流れるデータのエラー検出などを行なう。
第3層(ネットワーク層)
相手までデータを届けるための通信経路の選択や、通信経路内のアドレス(住所)の管理を行なう。
第4層(トランスポート層)
相手まで確実に効率よくデータを届けるためのデータ圧縮や誤り訂正、再送制御などを行なう。
第5層(セッション層)
通信プログラム同士がデータの送受信を行なうための仮想的な経路(コネクション)の確立や解放を行なう。
第6層(プレゼンテーション層)
第5層から受け取ったデータをユーザが分かりやすい形式に変換したり、第7層から送られてくるデータを通信に適した形式に変換したりする。
第7層(アプリケーション層)
データ通信を利用した様々なサービスを人間や他のプログラムに提供する。


両者を比較して思ったのは、反論ヒエラルキーのDH0〜DH3は、いわば、発言者と反論者の間のセッションが張られる前に通信が終わっているんだな、ということ。
DH4の段階に達して漸くセッションが張られ、意見のやり取りが始まる。
DH5の段階で、相手の議論をお互いがどのように理解しているかについての合意ないし了解が初めて達成される。
そして、DH6では、思考というアプリケーションレベルのやり取りがなされることにより、核心を突いた議論が遂に可能となる。


実際の通信は第7層まで確立しないとお話にならないが、その通信の上に乗っているネット上の論争でDH6まで達しているものの割合は果たしてどの位だろうか、と考えると、少し暗澹とした気分になる…。