2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

サマーズ・メモ

オバマ政権の内幕記事を書いたニューヨーカーのRyan Lizzaが、その記事の一つの資料として明らかにしたサマーズ・メモが話題を呼んだ。それは2008年12月15日付けの57ページのドキュメントで、サマーズが大統領に選ばれたオバマに経済危機の状況を説明したも…

法人税は二重課税か?

19日と26日に、法人税を企業の株主の負担とするべきか否かを巡る議論を紹介したが、Rajiv Sethiが否定派として参戦した(Economist's View経由)。 彼の主張の要点は以下の3点。 法人税を株主の負担と考えるならば、株を空売りした人には法人税がマイナスで…

上がってんの?下がってんの?

24日に紹介したGreat Gatsby curveを巡って、タイラー・コーエンとジョン・クイギン(+クルーグマン&デロング)が衝突している。 具体的には、コーエンの1/18エントリをジョン・クイギンがくさし、それをデロングとクルーグマン(邦訳)が支持した。 コー…

笑ってる場合ですよ?

1/12に公開された2006年のFOMC議事録における危機感の乏しさが一部で話題になったが(Free exchange、WaPo、dealbreaker)、こちらのブログでは実際に議事録中の「[Laughter]」=「(笑い)」の数を2006年よりも前も含めてカウントし、描画している(Free ex…

いかにしてFRBはトルーマン大統領を打ち負かして独立性を手に入れたか

という記事をFTブログでGavyn Daviesが書いている(Economist's View経由;原題は「How the Fed defeated President Truman to win its independence」)。 以下はその概要。 第二次大戦中、米国人は愛国者の義務という名の下に大量の国債購入を促された。そ…

法人税は誰が払っているのか?

19日に紹介したクルーグマンとマンキューのやり取りを巡って、スティーブン・ランズバーグがクルーグマンを、言葉にならない、と批判した。批判の内容は、法人の上げた利益による資本の蓄積は、株主と労働者の双方を(それぞれ配当と賃金を通じて)潤すのに…

同情するから金はやらん

先週紹介したジェフリー・サックスのリバタリアニズム批判の一節に対し、リバタリアンの経済学者の反応が割れている。 サックス批判派 (先週のエントリの最後にリンクした)Cafe HayekのDon Boudreaux Indeed, libertarians argue that these other values …

華麗なる曲線

最近、アラン・クルーガーCEA委員長の格差に関するスピーチ(+スライド)*1にブルッキングス研究所のScott Winshipが文句を付け*2、それにノアピニオン氏やジャスティン・ウルファーズが反論する、という一幕があった(Winshipの再反論はこちら)。 その中…

消費平滑化と消費性向

道草でも紹介されている*1サムナー対サイモン・レン−ルイス&クルーグマンの論争に絡めて、Nick Roweが消費平滑化と乗数効果について論じた。それをケインジアン・クロスの式を用いて小生なりに翻案すると、以下のようになる。 通常のケインジアン・クロスの…

都市は環境に優しい

とEd GlaeserがThe European誌のインタビューに応えて語っている(Mostly Economics経由)。 The European: As an economist, you have a very pragmatic approach to cities. Let’s begin with one of your thoughts: Cities help preserve the environment…

ウォーレンでなくて良いんかい?

今月初めにオバマ大統領が休会任命でリチャード・コードレイを消費者金融保護局長に任命する、ということがあったが、Naked Capitalismでイブ・スミスが、なぜエリザベス・ウォーレンが事実上の局長だった時に同じことをしなかったのか、という疑問を投げ掛…

欧州危機のトリレンマ

シンクタンクブリューゲルのJean Pisani-Ferryが、欧州は以下のトリレンマに直面している、と唱えている(Mostly Economics経由)。 公的債務を共同で負担する仕組みの不在 金融政策に依らない厳格な財政ルール 銀行と各国政府の相互依存関係 それぞれの問題…

コント:ポール君とグレッグ君(2012年第3弾)

今年に入ってからはほぼ一週間に一回というハイペースでお互いへの言及がありますな…。 グレッグ君 税金の累進性を論じるに当たっては、給与税を所得税と一緒にしておきながら法人所得税を無視するというのは意味が無い。というわけで、党派的なシンクタンク…

リバタリアニズムの何が問題か?

ジェフリー・サックスが、リバタリアニズムに惹かれる若者に警告を発している。 Libertarianism is the single-minded defense of liberty. Many young people flock to libertarianism out of the thrill of defending such a valiant cause. They also lik…

かくも長き不在

13日エントリは思いがけないほど多くのはてぶを頂いた。そこではMRブログエントリでのSixoというコメンターのコメントのみ全文紹介したが、もう一人gwernというコメンターが日本についてコメントしている。13日エントリでは末尾で「Japanese companies seem …

いかにWSJは政府雇用に関してミスリーディングしているか

と題した1/14付けハッフィントンポスト記事でジェフリー・サックスが、オバマ政権は連邦政府の雇用を拡大していると報じたWSJ社説に噛み付いた(Economist's View経由;原題は「How the Wall Street Journal Misleads About Federal Jobs」)。 サックスが問…

低成長の時代?

ケネス・ロゴフがProject Syndicateで、所得成長が必ずしも幸福度の上昇に結び付かないというイースタリンの逆説(Easterlin Paradox)を基に、長期的成長率にこだわることの愚を説いた*1 *2。それに対しWill Wilkinsonが猛然と反論し、ロゴフのかつての教え…

コント:ポール君とグレッグ君(2012年第2弾)

最近はエントリをほぼ全訳することが多かったですが、今回は手短に。 グレッグ君 10年ほど前の論文で一種のテイラールールを提示したことがあったんだけど、最近それを改めてプロットしてくれた人がいた。それによると、もうすぐ流動性の罠を抜け出せそうだ…

各国プログラマーのステレオタイプ的分類

タイラー・コーエンが、なぜソフトウエアでは一物一価の法則が成り立たず、米国や日本企業は自国の高いソフトウエア技術者を使い続けるのか――香港やシンガポールや中国ではもっと安価で雇えるにも関わらず――という一読者の疑問をブログエントリ化した。それ…

スタアの恋

Marginal Revolutionで紹介された論文の要旨*1: Marital sorting on education is an important but poorly understood source of inequality. This paper analyzes a group of men and women who do not meet their spouses in school, are not sorted by …

政府債務が将来世代の負担になる理由

昨日に続き12/30エントリで紹介した論争の余燼ネタ。 そのエントリの後半ではNick Roweのクルーグマン批判を紹介したが、そこでRoweが提示した世代重複モデルを小生なりに翻案すると次のようになる*1。 前提: 一世代は2期間生き、各期間で2世代が重複して存…

リカードの中立命題とウォレスのモジリアニ=ミラー定理は等価なのか?

12/30に紹介したリカードの中立命題を巡る論争は未だに余燼が燻っているが、その中で、リカードの中立命題とウォレスのモジリアニ=ミラー定理*1の等価性を基にルーカスの議論を擁護し、クルーグマンのルーカス批判に反批判を加えようとする動きがあった。 …

バーナンキのATフィールド

というのは意訳し過ぎだが、昨日のエントリの脚注で触れたタイラー・コーエンの12/25付けNYT論説のタイトルは「From the Fed, a Shield Against Europe」である。ちなみにこの論説を紹介したコーエンのMRエントリのタイトルは「Is the Fed our savior in fin…

安全資産は不足しているのか?

というテーマを巡って、デビッド・ベックワースとArpit Guptaというブロガーが論争している。 ベックワースが1/6エントリの(1)でこれまでのまとめを行っているが、彼の主張は、基本的に、ここの最後で紹介したようなカバレロ=デロング=Stephen Williamson…

銀行はプラシーボ?

スティーブ・ワルドマンが以下の2つの利得行列を示している。 一つ目は、金融業が存在しない場合の投資の利得行列。 自分/自分以外 投資する 投資しない 投資する 3 , 3 -1 , 1 投資しない 1 , -1 1 , 1 (イタリック体の数字は確率変数であることを示す)I…

コトリコフ、大統領選に出馬す

どこまで本気か分からないが、実際にキャンペーンのページを立ち上げている(ブロゴスフィアではタイラー・コーエン発でMostly EconomicsやCheap Talkが取り上げているほか、CNNも報じている)。下記はコーエンが引用したキャンペーンページの想定問答の一つ…

コント:ポール君とグレッグ君(2012年第1弾)

今年の第一弾。 グレッグ君 「The Reincarnation of Keynesian Economics」というこのエントリのタイトルは、20年前に僕が書いたあまり知られていない小論のタイトルだ。ワーキングペーパー版がここで、最終版(要サブスクリプション)はここだ。驚いたこと…

米国経済の7つの変わらぬ強さ

昨日紹介したクルーガーの講演で、もう一つ面白い一節があった。 One of the dangers of exaggerating the effects of uncertainty is that it could paralyze action. The fact that we live in uncertain times should not prevent us from taking actions…

米国人はベイジアンだ

日本語にすると駄洒落のようにも聞こえるが、クルーガーCEA委員長*1が先月21日の講演でそう述べている(Mostly Economics経由)。 ...we are a resourceful, results-oriented people, with the capability to continually reinvent ourselves to pursue sol…

バック・イン・ザ・U.S.S.R.

2009年末に死去したエゴール・ガイダルが、2006年11月の自著(下記参照)宣伝のAEI講演時に、ソ連崩壊の原因を穀物と原油という2つのキーワードで説明している(Mostly Economics経由の4年半前のタイラー・コーエンのMRエントリ経由)。Collapse of an Empir…