コント:ポール君とグレッグ君(2012年第2弾)

最近はエントリをほぼ全訳することが多かったですが、今回は手短に。

グレッグ君
10年ほど前の論文で一種のテイラールールを提示したことがあったんだけど、最近それを改めてプロットしてくれた人がいた。それによると、もうすぐ流動性の罠を抜け出せそうだね。
ポール君
グレッグ君があんなこと言っているけど、僕が2010年に再推計したルールでプロットすると、まだまだだね。それに、ライアン・アベントが言うように、この先コアインフレと失業率がどう動くかは未だ予断を許したものじゃあない。あと忘れちゃいけないのは、こうした過去のデータに基づいて推計したテイラールールというのは、当時のFRBならばこうするだろうということを表わすものであって、FRBが今なすべきことを必ずしも表わさない、という点だ。2008年以降に我々は、流動性の罠が想像の産物でも日本でだけ起きるものでも無いことを学んだのでは無かったかね? 仮に流動性の罠から抜け出したとしても、その再来を防ぐためには、高いインフレ目標を掲げると共に、高失業率と低インフレが続く間は積極的な金融政策を打つべきであって、間違ってもすぐに金利引き上げを始めるようなことがあってはならない。\_(・ω・`)ココ重要。

ちなみにマンキューのテイラールールは
 FF金利 = 8.5 + 1.4 ×(コアインフレ率−失業率)
で、クルーグマンが再推計したそれは
 FF金利 =  9  + 1.8 ×(コアインフレ率−失業率)
である。

従って、マンキューの式では失業率とコアインフレ率の差が8.5/1.4≒6.1を上回っている限りFF金利がマイナスとなるのに対し、クルーグマンの式ではその差が9/1.8=5を上回っている限りFF金利がマイナスとなる。


実際に彼らが使用したデータを描画すると以下のようになる(注:失業率はクルーグマンがUNRATEを使用したのに対し、マンキューが引用したEddy ElfenbeinはLNS14100000を用いている[ただElfenbeinもエントリ中ではUNRATEの方の直近12月の数字=8.5%に言及しているので、単にグラフを描画する時の指定を間違えただけのようにも思われる])。

コアインフレ率は直近11月時点で2.2%なので、Elfenbeinがエントリで述べているように、マンキュールールでは失業率が8.3%まで下がればFF金利がプラスに転じる。一方、クルーグマンルールでは、失業率は7.2%まで下がる必要があることになる。