法人税は誰が払っているのか?

19日に紹介したクルーグマンとマンキューのやり取りを巡って、スティーブン・ランズバーグがクルーグマンを、言葉にならない、と批判した。批判の内容は、法人の上げた利益による資本の蓄積は、株主と労働者の双方を(それぞれ配当と賃金を通じて)潤すのに、クルーグマンは恰もそれが排他的であるかのように論じた、というもの。


それに対し、意外にもオーストリア学派のボブ・マーフィーがコメント欄でクルーグマンを擁護した。曰く、クルーグマンが嫌な奴というのはいつものことであり同意するが、排他的であるかのように論じているのは彼が戯画化した右派であって、彼自身ではない、との由。


また、そのマーフィーが自分の考えに近いとしたAndy Bという別のコメンターは、法人税を直接支払っているのはあくまでも企業であり、直接的に影響を受ける人を見定めるのは容易ではないのだから、取りあえず除外して考えるのはありではないか、とクルーグマンの主張を擁護している。


このAndy Bの論点をより詳述したのがChad Brickという別のコメンターである:

...the issue with corporates is, of course, that no human pays the tax directly, so you have to impute it to the next level in order to assign it to anyone. Depending on the market, this burden is split in various ways between stockholders, employees (including management), and customers. This is not true of most other taxes, which are applied directly to an actual human. While we could follow any of these taxes further down the infinite rabbit hole of asking “But how do those taxes change the taxed person’s market behavior, and how much of it are they able to pass along to third parties, and how much are THEY able to pass along, etc”, this is neither useful or meaningful.

The data you are accusing Krugman of leaving out isn’t what you seem to want it to be – imputation entirely to stockholders – nor is accurate or comparible data available to my knowledge.

Another issue you seem to neglect is that corporations have any number of rights and priveledges, including the incredibly valuable limited liability. It can easily be argued that their taxes are a price they pay for these rights, which of course, like all rights, come with responsibilities.
(拙訳)
・・・企業にまつわる問題は、当然ながら、いかなる人間も税を直接支払っていないため、それを誰かに帰属させるためには、次の段階における負担者を決めなくてはならない、という点にある。この負担は、株主、被雇用者(経営陣を含む)、および顧客の間で、市場の状況によって様々な形で分割される。他のほとんどの税金は実際の人間に直接課税されるため、こうしたことは当てはまらない。それらの税金についても「この税の変化によって課税対象者の市場における行動がどう変わるか、そのうちのどれだけを第三者に転嫁できるか、その第三者はさらにどれだけ別の人に転嫁できるか、等々」といった感じで無限にウサギの巣穴を降りていくことができるが、それは有用でも意味のあることでも無い。
クルーグマンが無視したと貴兄が非難しているデータは、株主にすべて帰属させているため、貴兄の望むようなものになっているとは思われない。また、その点において正確ないし比較可能なデータは、そもそも私の知る限り存在しない。
貴兄が無視している別の問題は、有限責任という極めて高価値のものを含め、企業が数多くの権利や特権を有していることである。法人税というのはそうした権利の対価だという立論も容易であろう。権利というのはすべて負担を伴うものなのだ。

ちなみに一方のマンキューは、一般教書演説に対する感想に事寄せて、NYTのデビッド・レオンハートが紹介した左派のCenter on Budget and Policy Prioritiesによる法人税負担に関するマンキューへの反論は反論になっていない、と意気軒昂である。確かにそこで紹介された反論(専ら格差拡大を槍玉に挙げている)よりは、上記のランズバーグエントリのコメンターの方がまだ論点を突いているように思われる。