19日と26日に、法人税を企業の株主の負担とするべきか否かを巡る議論を紹介したが、Rajiv Sethiが否定派として参戦した(Economist's View経由)。
彼の主張の要点は以下の3点。
- 一定成長の配当割引モデルを考えた場合、株価はP=D/(k-g)となる(cf. ここ)。今、突然これに法人税が掛かった場合、税率をtとして、株価はP'=D(1-t)/(k-g)にジャンプする。然るに、株主の期待収益率はkであり、法人税導入前後で変わりは無い。
このうち最初の2点については、Andy Harlessがコメント欄で反論を試みている。曰く、
- 期待収益率kも法人税の導入によって変化するのではないか?
これに対しSethiは、いずれについても、少なくとも(二重課税の議論が前提とするような)単純な加法性が成立することはないだろう、と反論している。
一方、法人税を株主の負担とすることに積極的なマンキューは、とある匿名ブログが自分を支持した、と喜んでリンクしている。そちらでは、自営業者が会社法人となり、その前後で利益とトータルの税金が同じだとした場合、会社法人の法人税を除外して考えるのはナンセンス、という論理でマンキューを支持している。ただしこれについては、法人税を会社組織となったことによる便益の対価と考えれば(cf. 1/26エントリのChad Brickコメントの最後の段落;SethiのブログでもScottというコメンターが同様の指摘を行っている)、ナンセンスとは言えない、という反論もできるかもしれない。あるいは、この議論とSethiの議論を統合する方向を考えるならば、所有と経営が一体の場合は法人税も株主の負担と考えて良いが、両者の分離が発生した時には法人税も株主と切り離すべき、ということになるのかもしれない。