2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧

クルーグマンと日本の国民経済計算

クルーグマンが小林慶一郎氏の批判にブログで反論している。クルーグマンが財政による景気刺激を訴えるあまり不良債権処理の必要性を蔑ろにしている、という小林氏の批判に対し、そんなことはない、ロバート・ライシュと混同しているのではないか、と書いて…

ガイトナー・プラン=コトリコフ、サックス、カバレロ、スペンスの見方

今月上旬、FTのエコノミストフォーラムというサイトで、表題の経済学者によるガイトナー・プランに関する一連の投稿があったので、簡単に紹介してみる。 最初の投稿は4/6のコトリコフとサックスの連名によるもの。「ガイトナー・サマーズ・プランはあなたが…

銀行家とエコノミスト、どちらが悪い?

ダニエル・グロスというコラムニストが、スレートのコラムでそう問うている(これは釣りの質問ではない、と断っている)。 今は、金融危機に関する非難の大部分を銀行家に集まっている。しかし、エコノミストの力なくしては、こうした事態に至ることはなかっ…

英国版「清貧の思想」

日本が不況になった際、清貧の思想や清貧のすすめのような、不況もまたよし*1とする思想が流行ったことがあった。FTのコラムでも、今回の経済危機を受けて同様の趣旨のことを書いているものがあったので、紹介してみる。筆者は、デビッド・マーシュというロ…

英国版「マスゴミ」の反省

FTの編集者ライオネル・バーバー*1が、今回の危機に関するマスコミの自省の弁を書いている。イェール大学で講演したものの要約とのこと。 内容をざっとまとめると以下の通り。 今、マスコミにはインターネット革命による構造的な衝撃、今回の経済危機の衝撃…

ドイツにも経済ブロゴスフィアは立派に存在する

先日紹介したフェリックス・サーモンのブログ記事「10 reasons for the lack of German econobloggers」に対して、反論が出ている(エコノミストFreeExchange経由*1)。 反論記事の中でハリソンは、サーモンの見方を、ドイツ人ないしドイツ語圏に対するステ…

ジンガレス「毒を以って毒を制せよ」

少し前に、ルイジ・ジンガレスとオリバー・ハートが、今回の危機の一つの大きな原因となったCDSを、危機の解決に活用しよう、と提案していた。 ここで彼らは、銀行の資本の問題を、マージンコール(追証)に喩えて説明している。信用取引における委託保証金…

カーネマン「ルービニは3つの危機のうち10を予測した」

行動経済学で2002年ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが、今回の危機についてインタビューに答えている(Economist's View経由)。 そこで彼は、以下の寓話を披露している。スイス軍の兵士の一団がアルプスに雪山の行軍の演習に出掛けたが、厳…

資産バブルが所得格差の原因?

バブルが所得の一部の人間への集中を生むのか、それとも所得の集中がバブルを生むのか、という疑問をEconomist's ViewのMark Thomaが昨年10月に投げ掛けたが、それに対し、TIMEのジャスティン・フォックスが、資産バブルこそが所得格差の原因だ、と回答して…

ドイツ人経済ブロガーがいない10の理由

というブログ記事をフェリックス・サーモンが上げていた。面白いので全部訳してみる*1。 ロイターに移籍して*2一番わくわくしたことの一つは、とてもブログっぽくかつ本当の国際経済金融ウェブサイトを作り上げようとしていることだ。ブログっぽいというとこ…

ファントム・メナス

フェルドシュタインが地平線上のインフレについて懸念している。巨額の財政赤字と金融緩和が同時に進行している中で、長期金利がまだ将来のインフレリスクを織り込んで上昇していないのは驚きだ、と書いている。また、FRBは信用緩和で民間の各種証券を買い込…

ブラインダー「西部戦線異状あり」

アラン・ブラインダーがNYTコラムで現在の状況を二正面作戦の戦争に喩えている(Economist's View経由)。彼の比喩では、東部戦線は需要不足である。幸いにも、こちらについては政策当局者は何をすべきか知っており、巨額の財政支出と金融緩和により戦ってい…

産業連関表を用いた分析・補足の補足

昨日のエントリをアップしたのとほぼ入れ違いに、一昨日のエントリのコメント欄で、econ2009さんから同様の分析をしたというコメントを頂いた。econ2009さんの分析を見てみると、図表4は一昨日の小生の分析の一番目の比率とほぼ同じ結果になっている*1。 問…

産業連関表を用いた分析・補足の思考実験

昨日のエントリには拙ブログとしては多くのコメントを頂いた。多謝。 昨日の分析の意味を少し整理するため、今日は少し思考実験をしてみる。 輸入した鉄鉱石を鉄に加工して輸出している輸出加工部門と、国内で作った米を精製して消費している純粋国内部門の…

輸出は経済成長に貢献したか?−産業連関表を用いた分析

11日エントリおよびそのコメント欄で、2003年以降の景気回復を輸出主導であると主張するならば、(クルーグマンを含む多くの経済学者が行なったような)純輸出をベースに論考するのは誤りである、ということを述べた。というのは、実質ベースの純輸出という…

経済学者の立ち位置の見取り図

12日エントリのはてブで、経済学者のベン図かマトリックスがあれば良いのに、と言うコメントがあったので、ふと思い立ってとりあえず簡単なものを作ってみた。切り口は単純で、縦軸が共和党支持vs民主党支持、横軸がニュークラシカル(新しい古典派)vsニュ…

学界の最先端の金融経済学がほとんど使い物にならんという不幸

一昨日のエントリで概要の紹介だけに留めたBuiterの中銀のエコノミストに対する評価だが、やはり面白いので該当の段落とその拙訳を紹介しておく*1。 The Monetary Policy Committee of the Bank of England I was privileged to be a ‘founder’ external mem…

餅は餅屋…か?

昨日と一昨日、日本の経済学者に対しやや挑発的なことを書いてしまったが、今日はさらに挑発的なことを書いてみたい。というのは、最近、経済学は我々プロの仕事だ、素人は引っ込んでいろ、と言わんばかりの言動を続けて目にしたのだが、そうした言動から昔…

逆方向を向く日本と欧米の経済学者

岩本康志氏がブログで日経ネットPLUS上での土居丈朗氏との「論争」について触れている。内容は、土居氏の4/6の日経の経済教室への寄稿に対し、ニューケインジアンについての認識誤りがあるのではないか、と指摘した、というもの。ただ、旧来のケインズ経済学…

日本喩え話

(このエントリのコメント欄でJD-1976さんとやり取りをしているうちに思いついた喩え話) あるところに農家がいました。その農家の一家は概ね自給自足で生活できたのですが、ただ農機具を動かしたり生活に必要な燃料だけは外から買う必要がありました。その…

PERの加重平均と加重加重平均

ryozo18さんがジェレミー・シーゲルの面白い問題提起を紹介されている。シーゲルの問題提起を簡単に言うと、あるポートフォリオ(この場合S&P500というインデックスポートフォリオ)のPERを計算する際、現在S&P社は のように計算しているが(ただしViは銘柄i…

タレブ記事への反応

昨日紹介したタレブの「Ten principles for a Black Swan-proof world」に米国のブログからも幾つか反応が出ている。 Naked Capitalismのイブ・スミスは、素晴らしい、必読、と褒めつつも、実際に実行されることはないだろう、と書いている。 フェリックス・…

ブラック・スワンなんか怖くなくなる10の方法

ナシーム・ニコラス・タレブが、ブラック・スワンに振り回されない世界を作る10の原則を提示している(Economist's View経由)。 脆いものは小さなうちに壊せ Too big to failの事態に陥るのを避ける。今の経済の仕組みでは、最もリスクが高いもの、即ち最も…

日本の鏡像としてのカナダ・補足

今日は昨日のエントリの補足として、昨日日本について描画したグラフをカナダについて描いてみる。ソースはここ(なお、このHPでは、デフォルトで表示される期間より長いデータを取ろうとすると有料になってしまうようなので、以下では四半期ではなく暦年デ…

日本の鏡像としてのカナダ

Worthwhile Canadian InitiativeのStephen Gordonのこの4/5エントリが面白い。ここで彼は、2002年第1四半期から2008年第3四半期までのカナダの実質GDPの伸びを分解し、クルーグマンが示した日本のGDPの伸びの要因分解と対照させている(ただ、さすがにクルー…

実は石油危機…なのか?

ジェームズ・ハミルトンが、2007-2008年の原油価格高騰なかりせば、米国の景気後退入りも少なくとも1年遅かっただろう、というブログ記事を書いている。曰く、いくつかの手法を使ってみたところ、共通の結論が得られた、その結論とは、2007年第3四半期から20…

ガイトナー・プットの定式化・カモられるかも

またこのネタを引っ張ってしまうが、今日は簡単な計算とそれに関する考察。 これまでファンドの買取価格Pbが競争市場でファンド期待収益=ゼロのブレーク・イーブン価格になることを前提にしていたが、実際には高めの価格になってしまうことも考えられる。仮…

ガイトナー・プットの定式化・数値シミュレーション・その3

スティグリッツのガイトナー・プラン批判を読んでいて(マンキューブログ経由)、昨日と31日の数値シミュレーションで、大切な変数をシミュレーションし忘れていたことに気づいた。マンキューが引用したように、スティグリッツの批判のポイントは、"the Geit…

ガイトナー・プットの定式化・数値シミュレーション・その2

29日のエントリには、ひさまつさんから必読文献という言葉を頂いた。少し遅くなったが、改めて感謝。 一昨日はガイトナー案に関し3種類の分布について数値シミュレーションをしてみたが、その際、α(自己資金比率)はガイトナー案の1/7(≒0.143)固定とした…

文部科学省が“究極の経済対策”実施へ

文部科学省は、現在の金融危機に対する対策の一環として、主要大学の経済学部教授の再教育に乗り出す方針を決めた。米国では経済学部の有名教授が活発に経済政策について議論を交わしているのに対し、日本ではそうした状況が見られないどころか、経済の実態…