ブラック・スワンなんか怖くなくなる10の方法

ナシーム・ニコラス・タレブが、ブラック・スワンに振り回されない世界を作る10の原則を提示しているEconomist's View経由)。

  1. 脆いものは小さなうちに壊せ
    • Too big to failの事態に陥るのを避ける。今の経済の仕組みでは、最もリスクが高いもの、即ち最も脆いものが最も大きくなってしまう。
       
  2. 損失を社会に押し付けて利得を民間が得る仕組みはNG
    • それは資本主義と社会主義の最悪の組み合わせ。1980年代のフランスでは社会主義者が銀行を乗っ取ったが、2000年代の米国では銀行が政府を乗っ取った。シュールな世界だ。
    • 救済が必要なら国有化すべき。救済無用の存在は、自由で小さくリスクに耐えられる主体となるべき。
       
  3. 目隠ししてバスを運転して(ぶつけた)人たちに新しいバスを与えるな
    • 大学、規制当局、中央銀行、政府、経済学者のいる各種機関が失敗を犯した。
       
  4. インセンティブ」ボーナスを受け取る人に原発と金融リスクのマネージメントを任せるな
    • そういう人は利益を上げるために手抜きをする。
    • ボーナスシステムの非対称性が今回の事態を招いた。報酬があるなら処罰もあるべき。
       
  5. 複雑性に対して単純性でバランスを取れ
    • ただでさえ世の中は複雑なのだから、金融商品は単純であるべき。世の中の複雑性はそれ自体レバレッジを掛けているようなものなので、さらにレバレッジを付け加えるような真似をすべきでない。
       
  6. 注意書き付きでも子供にダイナマイトを与えるな
  7. 信頼に頼るのはポンツィ・スキームだけ。政府が信頼回復に努める必要は無い
    • 複雑なシステムでは噂が噂を呼ぶ。政府が頑張ってももうどうにも止まらない。噂を信じちゃいけないよ。
       
  8. 禁断症状の出ている麻薬中毒者に薬を与えるな
  9. 老後を金融資産や過ちを犯しがちな「エキスパート」の助言に託すべきでは無い
    • 価値の貯蔵において市場を使わないようにすべき。一般市民に必要なのは確実性なので。
    • 人々は自分のコントロールできるビジネスの問題について心配すべきだが、コントロールできない投資の問題について心配すべきではない。
       
  10. 壊れた卵でオムレツを作れ*1
    • 皆で資本主義2.0へ移行しよう
      • 壊れるものは壊れるに任せる
      • 負債を株式に転換
      • 経済や経営大学院のエスタブリッシュメントを重視しない
      • 「ノーベル」経済学賞の廃止*2
      • LBOの禁止
      • 銀行家は本来の役目に立ち戻る
      • 今回の事態をもたらした人々から賞与を取り戻す
      • 確実性の乏しい世間の渡り方を人々に教育する

そうすれば、経済生活は実際の生物の環境に近くなる、即ち、会社は小さくなり、生態系は多様になり、レバレッジは無くなる、というのがタレブの意見である。銀行家ではなく企業家がリスクを取り、特にニュースになることもなく誕生と死滅を繰り返す世界こそが、ブラック・スワンに耐え得る世界である、とのことだ*3

*1:これはイーデン卿の“If you've broken the eggs, you should make the omelette.”という言葉に掛けていると思われる。

*2:cf.このエントリ

*3:ただ、ここでは今回の危機はブラック・スワンではないと述べているのだが…。