というNBER論文をローレンス・ボールらが上げている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「A Simple Model of Average Inflation Targeting」で、著者はLaurence M. Ball(ジョンズホプキンズ大)、Junnan Zhang(厦門大)。
以下はその要旨。
This paper derives the optimal monetary-policy rule in a simple model with anchored inflation expectations and an effective lower bound (ELB) on interest rates, assuming a long-run inflation goal of 2%. With fully anchored expectations, the optimal policy is a version of average inflation targeting: to offset periods when the ELB forces inflation below 2%, policymakers target a fixed inflation rate above 2% whenever they are unconstrained. With expectations that are partially but not fully anchored, the inflation target away from the ELB varies with the state of the economy. For some parameter values, the target is highest after a period when inflation has been low.
(拙訳)
本稿は、長期的な2%インフレ目標を仮定して、固定されたインフレ予想と金利の実効下限(ELB)を備えた簡単なモデルにおける最適な金融政策ルールを導出する。完全に固定された予想では、最適政策は平均インフレ目標の一つのバージョンになる。即ち、ELBによってインフレが余儀なく2%より低い期間を相殺するために、政策担当者は、制約されていない時はいつでも、2%を超える固定されたインフレ率を目標とする。予想が完全ではないが部分的に固定されている場合には、ELBから離れた時のインフレ目標は経済の状態によって異なる。あるパラメータ値においては、インフレが低かった期間の後に目標は最も高くなる。
以下はインフレ予想が完全に固定されている時のルールを示した論文の図。
以下はインフレ予想が部分的に固定されている時のルールの図。
ここでμは以下のように定式化された政策目標におけるウエイトである(Ωは経済の状態、i-は任意の大きな値に設定された金利の上限)。
結論の冒頭では、
In 2025 the Federal Reserve will formally review the average-inflation-targeting strategy that it announced in 2020, so now is a good time to analyze the strategy.
(拙訳)
2025年には、FRBは2020年に公表した平均インフレ目標戦略を公式にレビューする。従って現在はその戦略を分析するのに良い時機である。
と書いている*1。
*1:ジェイソン・ファーマン「3%インフレ目標に切り替えよ」 - himaginary’s diaryで紹介したファーマンも、自分が唱えるインフレ目標引上げのタイミングとして2025年の見直し時を提唱していた。