レイヨンフーブットのマクロ経済論:安定と不安定

レイヨンフーブットが再びvoxeuに経済危機についての論説を書いているので、以下にざっとその論旨を紹介する(Economist's View経由)。

  • かつてはケインズ経済学と新古典派経済学を折衷させた新古典派総合があり、最近はニューケインジアンと新しい古典派を折衷させた「半塩水」経済学があった。しかしいずれも間違いで、本質に目を向けていない。その本質とは、市場経済に本来的に備わっている不安定さだ。
  • 約40年前、自分は「コリドー仮説」というものを唱えた。経済はあるコリドー(回廊)の中に収まっている間は安定しているが、そこから外れてしまうと、自己増幅的な逸脱によって不安定化してしまう。その場合、コリドー内に戻るために、政府の助けが必要になる。
  • ただ、何らかの外生的な衝撃によってコリドーから外れてしまう、という考え方をしていると、経済に内生的に存在する不安定さを見過ごすことになる。
  • 部分準備銀行という制度に内在する不安定さは、200年もの間知られてきた。ハイマン・ミンスキーは、その金融の不安定さが、商業銀行の枠内に留まらないことを示した。彼は、今回の「大平穏期」のような長期の安定した状態は、人々がリスクを冒す性向を増し、金融システムを脆弱にさせる、と論じた。そして、脆弱なシステムはいつかは破綻する。
  • 今後注意すべき課題は以下の4点。
    • 日本型停滞と中南米ハイパーインフレ。通常は両極端と思われているが、現在の巨額の財政赤字、巨額の短期の負債、巨額の経常赤字を考えると、ギリシア神話のスキュラとカリュブディスの間を抜ける狭い航路のように、両者の距離はそれほど遠くない。
    • 財政が限界に近づいている今、政府には次のバブル崩壊に対処する余裕はない。従って経済政策は安全策(フェイルセーフ)を旨とすべきだが、現在の資産価格のリフレを狙った超低金利政策は安全策とは言えない。その政策により、銀行は元のゲームのテーブルに戻ってしまっている。そのゲームこそが今回の危機を招いたのだが。
    • 高いレバレッジ。政府は、レバレッジ規制がまた資産価格下落と信用収縮を招くのではないかと懸念して腰が引けているようだが、今やらずしていつやるというのだ?
    • 中央銀行は奇妙な資産を呑み込んで膨れ上がったバランスシートを元に戻す「出口戦略」を考えているようだが、将来に危機が再発したらまた同様の破れかぶれの非伝統的政策を採るつもりなのだろうか。現行の体制では、中央銀行の責任に限度が無い。この問題は、金融部門の規制によってのみ解決できるが、今のところ、我々はどうやってその規制を行なえば良いか知らないみたいだ。