次の景気後退について知っておくべきこと(主演:ドナルド・トランプ)

というWaPo論説をサマーズが書いている(H/T 本石町日記さんツイート、原題は「What you need to know about the next recession (starring Donald Trump)」)。

サマーズはそこで以下の4点を挙げている。

  1. 米国の繁栄にとって、米国の議会の機能不全よりも「扇動家ドナルド」選出の可能性が遥かに大きな脅威
    • 馬鹿げていて矛盾した財政政策や貿易政策という話を超えて、通常はアルゼンチンや中国やロシアといった国の文脈で語られる政治リスクを初めて米国に関連付けた。債務の再交渉、自分に反対する出版物の告訴、条約破棄、といった脅しについてはそれ以外の解釈のしようがない。
    • 忍び寄るファシズムはマクロ経済政策よりもはるかに重大な問題!
  2. 2009年は1929-33年の再演とはならなかったが、まだ安心はできない
    • 2007-18年の経済のパフォーマンスは1929-40年と同じくらい悪いものとなる可能性がある。
    • 政府債務を抑え、国家の安全保障を高め、貧困者への寛容を促し、中間層の生活水準を引き上げるに当たっての単一の最も重要な課題は、米国の経済成長を加速させること。
  3. 財政政策は今や最も重要な安定化ツールとなった
    • これは自説の長期停滞仮説に基づく。大恐慌以来、財政政策の安定化ツールとしての重要性がこれほど高まったことはない。
    • 過去の経験は、今後3年以内に景気後退が公式に判定される可能性が半分以上あることを示唆している。FRBは景気後退期に通常は実質金利を4〜5%引き下げてきたが、次の景気後退期にはとてもそれだけの余地はない。
    • FRBの非伝統的政策のことは十分に承知しているが、1.5%の金利引き下げに相当する以上の追加緩和効果は望めそうにない。
      • 現金の存在する社会で-0.5〜-0.75%以下の金利は難しく、また、そこまで下げると金融仲介を実質的に損なう。
      • フォワドガイダンスは理論上は結構だが、次の景気後退が訪れた時、先物金利は遥か未来までかなり低い水準が続くと既に予想されている。
      • 量的緩和は既に収穫逓減になっている。利回り曲線は平坦化しており、市場は回復初期に見られた非流動性プレミアム無しで機能している。
      • 「ヘリコプターマネー」は基本的に財政政策の一形態であり、中央銀行が自律的に実行できるものではない。
    • 金利も財政政策を行うべき理由となる。現在の経済は適度の成長のために非常に低い金利を要求しているが、そうした金利は、レバレッジ、少しでも高い金利を追い求めること、金融工学、バブル、といったものの種となる。金利を顕著に引き上げることを多くの人が提唱しているが、何もせずにただ金利を引き上げれば景気後退を招くため、正しい政策は金融的に持続可能な成長を促すための需要喚起である。従って、民間需要を喚起するための税や規制や移民についての改革とともに、財政政策を実施すべき、ということになる。
  4. 景気後退の可能性を低める、ないし、景気後退が来た時に対処するための拡張的財政政策を適用すべき場所は多々ある
    • 最近の金利や雇用機会や資材コストの低下に照らすと、米国のインフラ投資の減少は容認しがたい。
    • 依然として投資が振るわない住宅などの耐久財も有望な分野。
    • 社会保障への支援も有望。現時点での社会保障は、成長率が政府の借入金利を大きく上回るという点で、良い経済学である。またそれは、財政赤字を拡大させることなく需要を高める。