ラジャン、米国型資本主義の今後を語る


昨日に引き続きWSJブログネタ。昨年末のラグラム・ラジャンへのインタビューの拙訳。


シカゴ・ブース・スクール・オブ・ビジネスの経済学者ラグラム・ラジャンは、その先見性で名を知られている。2005年、当時のFRB議長アラン・グリーンスパンを称える会合で、彼は、過去20年間の金融の発達が惨事を招きかねないと主張する論文を提示した。彼のそうした見解は評判が悪く、その時点では厳しい批判にさらされた。今は人々は彼の言うことに大いに耳を傾けるようになっている。

ラジャン氏は2003年から2006年までIMFの主任エコノミストを務めた。彼は今回のWSJとの会見で、米国の2000年代の憂うべき経済パフォーマンスが意味するところと、それが米国型資本主義への見方にどのような影響を与えたか、および、その結果としてモデルがどのように変化する可能性があるか、について語ってくれた。


2000年代の10年間は、エンロンの崩壊やITバブルや大不況がありましたが、それによって米国型資本主義モデルの信頼が損なわれたでしょうか?

物の言い方は随分変わりましたね。人々は米国を手本とすべきとはもう言わなくなりました。かつて米国は良く講釈を垂れていましたが、今は当然の如く他国はそのことをネタにしています。
資本主義は機能しない、と結論した人もいます。問題は、彼らが、理に適う代替物を持ち合わせていないことです。規制がより必要だと言うことは、市場が機能しないと言うことと同じではありません。


あなたは世界中を飛び回って各国政府や中銀に助言しています。その多くは米国型モデルを目指していました。彼らの態度は変化しましたか?
米国型資本主義を今までのぬるま湯的なやり方への脅威と考える人々は、この危機をその脅威を追い払う機会と捉えています。仲間内経済が力を取り戻しつつあり、国内大手企業や様々な形の保護主義が勢いを得ています。
例を挙げましょう。インドで金融部門の改革に関する委員会の議長を務めた時のことですが、我々の提案の一つは、金融システムにおける国立銀行の優勢な立場を弱めねばならない、というものでした。それに対する反応は、「いや、我々はむしろ先を行っているのだ。今や米国が銀行を国有化しているではないか」というものでした。


今回の危機の結果として、米国型資本主義モデルはどのように変化すると思われますか? かつての信頼を取り戻せるとお思いですか?
過去に試された他のモデルと比べれば、このモデルは良く機能していると思いますよ。民主主義と同じで、最大多数の最大幸福をもたらしていると思います。
問題は、如何に今のシステムに存在する過剰な変動性を抑えながらその恩恵を享受するか、です。それが今後長期に亘って我々が取り組むべき課題でしょう。セーフティネットを強化すべきか、金融はこれまでのようにリスクを孕んだもので良いのか、そうしたことを今後は検討すべきです。
より安全に、よりリスクを少なく、という方向に行きがちですが、それについては十分な注意が必要です。経済のダイナミズムと安全の強化は背反関係にあるからです。


あなたのおっしゃる安全強化のためのダイナミズムの減退というトレードオフがうまくいくかどうか知る術はありますか? 経済学はその結果を予測する手段を持ち合わせていますか?
本当のところは誰にも分かりません。我々は今、いろんなことをやろうとしています。ダイナミズムをもたらすリスク引き受けのインセンティブは維持したいというのは皆の総意ですが、実際には間違いがあるでしょう。それがまさに規制の歴史です。振り子が規制強化の方向に振れるたび、後になってやり過ぎと後悔するような規制を導入することもあれば、現代経済には不可欠と考えるような規制を導入することもあります。