(このエントリのコメント欄でJD-1976さんとやり取りをしているうちに思いついた喩え話)
あるところに農家がいました。その農家の一家は概ね自給自足で生活できたのですが、ただ農機具を動かしたり生活に必要な燃料だけは外から買う必要がありました。その農家は、自分のところで採れた農作物からピザを作り、それを売ったお金で燃料代金を賄っていました。
するとある時、世の中が好景気になり、ピザがよく売れるようになりました。そのため、農作業に比べてピザ作りに費やす労力の割合が大きくなりました。そこで農家は、新たに人を雇い入れると同時に、ピザを焼く窯*1も一つ新調しました。
農家の人たちは、ピザが余計に売れるようになった分、自分たちは豊かになったはずだと考えました。ところが家計簿を調べてみたところ、外からの収入は別に増えていませんでした。というのは、世の中が好景気になったお蔭で燃料代も上がり、ちょうどピザが余計に売れるようになった分を相殺してしまっていたからです。月々の燃料の購入量はそれほど増えていないにも関わらず、です。
物知りの農家の三男坊は、販売したピザの枚数と購入した燃料のガロン数を考えた場合、後者は増えていないのに前者が増えたのだから、これは「外需依存の好景気」と言うんだよ、と家族のみんなに解説しました。でも実際の家計収入は増えていないので、ほかの家族はいまひとつその説明がピンときませんでした。
そうこうするうち、世の中が突然不景気になり、ピザがぱったり売れなくなりました。新調した窯も使わなくなったので倉庫にしまい、雇った人にもお引取り願うことになりました。ただ、不幸中の幸いで燃料の価格も不景気のお蔭で下がったので、家計は赤字には陥らずに済みました。なお、農家にはこの好景気騒動の遥か前からピザを長年売ってきたことによる貯蓄もあったので、そこからの利子収入も家計の助けとなりました*2。
すると例の三男坊は、世の中の好景気に浮かれてピザをたくさん売ったからいけないんだ、これからはやるべきことは、しっかりと質感を持った家計を築き上げていくことだけなのだ、と家族のみんなに説教しましたとさ*3。めでたしめでたし。