ダニエル・グロスというコラムニストが、スレートのコラムでそう問うている(これは釣りの質問ではない、と断っている)。
今は、金融危機に関する非難の大部分を銀行家に集まっている。しかし、エコノミストの力なくしては、こうした事態に至ることはなかったはずだ、というのがグロスの主張である。しかも事態が悪くなった時、彼らは(一部を除いて)どこまで事態が悪化したか把握できなかった、とグロスは論難する。
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- これらの災厄はグリーンスパンが書くのを手伝ったオペレーティングシステムの特性であり、バグではない。
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- 彼はまた、2006年10月9日に、住宅市場の最悪期は過ぎた、と述べた。
- デビッド・レレア(全米不動産業協会のチーフエコノミスト)
- 10年後には必ず値上がりしているのだから、と繰り返し米国民に住宅購入を勧めた。
- ヘンリー・カウフマン
- リーマン破綻時に同社の金融とリスクに関する委員会の委員長だった。
- エコノミスト予測調査
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- 2008年第4四半期の調査では、当該四半期の成長率を0.7%から-2.9%に下方修正し、2009年第1四半期の失業率を7%と予測した。実際にはそれぞれの数値は-6.3%、8.5%だった。
CEOや銀行家が見通せなかった複雑な経済情勢を、いかに頭脳明晰、あるいは天才とはいえ、エコノミストが見通せなかったのを責めるのは酷かもしれない――だが、彼らの失敗は、職業上の問題でもある、とグロスは指摘する。つまり、効率的市場、合理的プレイヤー、自社の価値の保全を第一に考える経営者、というエコノミストの多くが抱く世界観では、信用バブル(もしくはどんなバブルでも)の最中の人々の行動は説明できるはずがない、というわけだ。そうした経済学は時代遅れになり、行動経済学のような社会学、人類学、心理学を取り入れた経済学に取って代わられつつある、とグロスは(大雑把な図式、と断りつつ)説明する*1。
またグロスは、銀行家の経済的な損失はエコノミストに比べ大きかったものの、評判の損失という点では銀行家とエコノミストは五分ではないか、と推測する。そして、両者ともこの破綻からあまり自己反省をしていないようだ、と批判し、その例としてグリーンスパンはせいぜい自分の理論の欠陥を見つけたくらいにしか思っていない、と彼の有名な議会証言を槍玉に上げる。
最後にグロスは、銀行家対エコノミスト? 怪物対エイリアン?*2 と揶揄して、読者の意見をメールで募集している。
こうしたグロスのエコノミストに対する見方はやや単純に過ぎるきらいもあるが、米国の今の一つの気分を代表していることは間違いないだろう。
*1:この辺りの説明はカーネマンのインタビュー記事での説明とも符合する。
*2:追記:後で気づいたが、この元ネタはおそらくこのドリームワークス映画。