産業連関表を用いた分析・補足の補足

昨日のエントリをアップしたのとほぼ入れ違いに、一昨日のエントリのコメント欄で、econ2009さんから同様の分析をしたというコメントを頂いた。econ2009さんの分析を見てみると、図表4は一昨日の小生の分析の一番目の比率とほぼ同じ結果になっている*1


問題は、その後の、モデルと合わない22兆円あまり(小生が「48-25.5=22.5兆円の差額」と書き、econ2009さんが「足りない輸入の増加額(31921−8356)」と書いたところのもの)の扱いである。小生は、一昨日エントリで、異論はあろうが、と断った上で、それをすべて輸出の誘発額に被せた試算を示した。それに対し、実際に異論を唱えたのがecon2009さんということになる。econ2009さんの方法は、基本的に小生が昨日エントリのケース2で書いたような比例配分(ただしそこで書いたような付加価値額でのいい加減な比例配分ではなく、きちんと各需要項目の輸入誘発額を計算した比例配分)である。


一方、小生は、昨日のエントリのケース1という極端な思考実験(=経済成長が輸出入と無関係の部門で担われるケース)により、その差額を輸出誘発額に被せ得る場合を例示した。


ただ、実は最初に考えていたのはもっと単純なことで、この22.5兆円は、かなりの部分が資源価格高騰の効果ではないか、ということである。その辺りの論考は拙ブログでは何度かやってきたが(たとえばここここ)、もしそうだとすると、この輸入増加が「消費、投資、在庫増加、輸出といった最終需要の増加が生産の増加を生み出し、それによって中間需要として購入される割合が高いため」にもたらされたというecon2009さんの考察は当てはまらなくなる。つまり、日本経済の内生的要因でもたらされたのではなく、日本ではどうしようもない外部要因によりもたらされたマイナス要因、ということになる。言ってしまえば、この輸入増加分については、日本の国内部門は、昨日の思考実験モデルにおける米関係部門と同じ立場になるわけだ。そして、外部要因によってもたらされたマイナス要因ならば、外部要因によってもたらされたプラス要因に被せてしまえ、という単純な理屈が、最初のエントリを書いたときに考えていたことである。「交易条件が悪化したためにもたらされたマイナス要因」と書いたのはそういう意味である。

*1:なお、econ2009さんは小生が使用した粗付加価値誘発係数においては輸入を控除していないように思われている節があるが、こちらの粗付加価値誘発額の定義から明らかなように、控除されている。従って、両者の結果がほぼ同じになるのはある意味当然である。