2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ガイトナー・プットの定式化・数値シミュレーション

というわけで、引き続きこのネタ。一昨日のエントリの後から追加した注では、価格Pの分布p(P)が分かっていれば、クルーグマンやサックスが使用した2状態モデルにおいて、価格P1とP2、ならびにP1の実現確率p1が、恣意的な数値例としてではなく、きちんと数学…

ガイトナー・プットの定式化・補足

昨日のエントリをいったん更新した後、ちょこまか間違いを修正したり追記したりしていたが、そのうち一つ大きな間違いに気づいたので、それについてはエントリを改めてここに訂正を記述する。大きく間違っていたのはこの文章(元エントリでは取り消し線で削…

ガイトナー・プットの定式化

ガイトナー案とそれを巡る経済学者の反応については既にryozo18さんがまとめられているほか(こことここ)、池田信夫blog、極東ブログでも紹介されている。今日のエントリでは、その中でも論争の的になっている、いわゆるガイトナー・プットの補助を受けて決…

金融業のGDP構成比上昇は危機の前触れか?

直近のクルーグマンのop-edに次のような一節があった。 And the financial system wasn’t just boring. It was also, by today’s standards, small. Even during the “go-go years,” the bull market of the 1960s, finance and insurance together accounte…

社会保障はポンツィ・スキームか?

昨日に続き、Econlogのデビッド・ヘンダーソンのエントリをもう一つ紹介する。 マドフのポンツィ詐欺による損失をIRS(内国歳入庁)がキャピタル・ロスではなく事故ないし盗みによる損失として認める方針を示したのに対し、ヘンダーソンの友人が、「では最大…

ナターシャ・リチャードソンは公営医療制度のせいで死んだのか?

というやや扇情的なタイトルのエントリがEconlogに上がっていた(注:ナターシャ・リチャードソンはカナダのスキー場での事故で3/18に死亡した女優。リーアム・ニーソン夫人であり、バネッサ・レッドグレーブの娘)。 デビッド・ヘンダーソンはこの中で、カ…

リージョンコードは誰のせい?

マシュー・イグレシアスのブログに面白い話が紹介されていた。 ゴードン・ブラウン英首相が訪米した時、手土産としてHMS Gannetの木材から製作されたペン立てを贈ったが、オバマがブラウンに贈ったのはDVDセットだったという。しかもそのDVDはリージョンコー…

バーナンキ・グリーンスパン「カネを貸した側が悪いわけではない」

昨日と一昨日のエントリで紹介したグリースパンのWSJ論説では、FRBの金融緩和ではなく、新興国の過剰貯蓄が米国の住宅バブルの背景にあることを主張している。ただ、さすがに一部の論者のようにそこからカネを貸した側が悪いという結論に飛びつくことはなく…

グリーンスパン「テイラールールなんか欠陥モデルだ」

昨日のエントリでテイラーに対するグリーンスパンの反論を紹介したが、良く考えてみると、テイラールールに対して結構凄いことを言っているので、改めてその段落を全文引用してみる。 Moreover, while I believe the "Taylor Rule" is a useful first approx…

リーマン破綻が危機のきっかけではない?

という議論が少し前に米国で交わされていた。議論の発端はジョン・テイラーのWSJ論説(池田信夫氏まとめはこちら)。 この論説は、以前ここで紹介したFRB批判論文をベースにしているが、その中でテイラーは、3ヶ月物のLIBOR-OIS(Overnight Index Swap)スプ…

モノづくりはやはり必要

Economist's Viewで紹介されていたが、Dissent Magazineという雑誌のオンラインシンポジウムで、「製造業はまだ米国に必要か」というテーマが取り上げられた。その中で、経済政策調査センター(Center for Economic and Policy Research)のディーン・ベーカ…

原油価格論争(投機が原因or否):再訪

米CBSの60ミニッツを見ていたら――いえ、話題のこのインタビューではなく、今週の水曜深夜にTBS「CBSドキュメント」で放映していた1/8付けのこの報道――、昨年の原油価格高騰は投機によるものか否か、について検証していた。 このテーマは、実は拙ブログのそも…

ケインズ政策としての第二次世界大戦(「現代と戦略」より)

永井陽之助氏が亡くなった。氏が文藝春秋読者賞を受賞した連載を単行本化した「現代と戦略」が出たのは、四半世紀も前のことになる。残念ながら現在は絶版になっているようだが、その本の中で、第二次世界大戦と軍事ケインズ主義を取り上げた文章は、昨今の…

悪いのは経済学者であって経済学ではない

ロドリックがそう書いている(Economist's View経由)。内容をざっとまとめると以下の通り。 経済学者たちは規制されない金融が良いもので、政府の干渉は危険だ、と唱え続け、シラーやルービニのような少数の例外を除けば、危機の危険性に関して警告できなか…

単位根なんかいらない

昨日のエントリでは、「コント:ポール君とグレッグ君:2009年第3弾」を巡るコーエンとキャプランのやり取りを紹介し、併せて彼らの議論で見過ごされていると小生が考えた点(ペイオフの構造から考えてマンキューには賭けのインセンティブがあるがクルーグマ…

経済学者なら賭けに応じろ

マンキューのクルーグマンへの賭けの要求をネタに、Econlogのブライアン・キャプランがそう書いている。 I have a dream that one day, people who refuse to bet on their statements will be viewed with greater contempt than those who bet and lose. …

マイロン・ショールズ「店頭CDS市場なぞ爆破しちまえ」

TIMEのジャスティン・フォックスによると、今月6日のNYU主催の金融危機に関する会合で、ショールズがそう述べたという。ブルームバーグも同様に報じているほか(ジョージ・ワシントンブログ経由)、NYUのこの動画で実際の発言が確認できる。 ブルームバーグ…

米国のIS不均衡・20年前との違い

Economist's viewのこのエントリで再びグローバル・インバランスの話題が取り上げられているのを読んでいて、ふと素朴な疑問を抱いた。約20年前の日米摩擦華やかなりし頃も、日米の経常収支不均衡が話題になり、90年代にはそれを巡る小宮=クー論争もあった…

クルーグマンの知名度

クルーグマンが「Limits of celebrity」と題したブログエントリで、未だにMITで教えていると思われていた、というエピソードを紹介している。また、2年前には「フラット化する世界」の著者と間違えられた、というエピソードも紹介している。 トーマス・フリ…

文藝春秋のクルーグマンインタビュー記事・続き

昨日に引き続き、文藝春秋のクルーグマンのインタビュー記事から、気になったところを抜粋してみる。今日は日本に関する箇所。 日本は96年が財政出動のピークだと思います。その時日本経済は3パーセントの成長を見ました。財政出動が経済を刺激するのは確か…

文藝春秋のクルーグマンインタビュー記事

田中秀臣氏が既に一部紹介しているが、文藝春秋にクルーグマンのインタビュー記事が載っているので、気になったところを抜粋してみる。 リーマンが救済されなかったことは驚きでした。絶対に救済されると思っていたので、「なぜ政府はリーマンを救済したのか…

グローバル・インバランスの同時決定?

昨日のエントリでカバレロの銀行救済案を紹介したが、カバレロの危機全般に関する論説もその少し前(1/23)にVoxEUに掲載されている(前編、後編。池田信夫氏がその内容を要約している)。 その主旨は、ナイトの不確実性が今回の危機の原因、というものであ…

カバレロの銀行救済案

27日のエントリでサックスの銀行救済案を紹介したが、そのポインタとなったマンキューブログでは、同時にカバレロの銀行救済案(2/22付け)も紹介している。 その案とは、政府は、5年後に、銀行の現在の発行済み株式数の2倍の株数を、今の株価の2倍の値段で…

谷深ければ山高し…か?・補足

一昨日のエントリのブコメで教えてもらったが、ryozo18さんがほぼ同時に同じテーマを取り上げていた。そこでクルーグマンのこのエントリのタイトル「Root of Evil」を「悪意根」と訳しているのを見て、上手いと思った(単位根と語呂をきちんと合わせている)…

コント:ポール君とグレッグ君(2009年第1.5弾)

昨日のエントリを書くためにマンキューブログを見ていて、1/27にマンキューがクルーグマンに噛み付いていたことに気づいた。この時はそれ以上の議論に発展しなかったので、拙ブログでも特に取り上げなかったが、今読み直してみると、今回の二人の衝突の伏線…

谷深ければ山高し…か?

気がついたらクルーグマンとマンキューがまたブログで丁々発止とやりあっていた。というわけで、「コント:ポール君とグレッグ君」の2009年第3弾。 (…もっとも、去年までの当てこすりや皮肉と違い、段々お互いへの攻撃がマジになってきたので、そろそろコン…

誰が国債を買うのか?

昨日紹介したNick Roweのコメントは、「誰が国債を買うのか?(Who will buy the bonds?)」と題した自身の3/1エントリに付けられたものだった。このエントリで彼は、財政政策が効果を発揮するには中央銀行の国債購入は不可避、という論考を行なっている。 …

リフレ政策は核爆弾?

Nick Roweが自分のブログエントリのコメントで面白いことを書いている。これは、"Don the libertarian Democrat"氏がその前のコメントで書いた 「リフレ政策の同工異曲の提言はあちこちのブログで見るが、なぜ一向に実施されないのだ? FRBは何を恐れている…

クルーグマンへの公開書簡・続き

昨日のエントリで取り上げたサムナーのクルーグマンへの公開書簡には、クルーグマンから反応があった(ということをコメント欄で教えてもらった)。ただ、その返事があまりに素っ気無かったので、そのエントリに、さすがにそれはないんじゃない?とクルーグ…

クルーグマンへの公開書簡

スコット・サムナーというベントレー大学経済学部教授がブログ上で出したクルーグマンへの公開書簡が話題になっている。内容は、なぜリフレ政策を支持しないのか、というもの。タイラー・コーエンが絶賛しているほか、Econlogのアーノルド・クリングも紹介し…