文藝春秋のクルーグマンインタビュー記事

田中秀臣氏が既に一部紹介しているが、文藝春秋クルーグマンのインタビュー記事が載っているので、気になったところを抜粋してみる。

リーマンが救済されなかったことは驚きでした。絶対に救済されると思っていたので、「なぜ政府はリーマンを救済したのか」というコラムをすでに用意していたくらいです(笑)。

…このエピソードは以前どこかで読んだような気もするが、どこで読んだか思い出せない(あるいは記憶違いかもしれない)。

これは一人の人間が起こした危機ではありませんが、その犯人リストのトップにいるのは前FRB議長、アラン・グリーンスパンです。というのも、彼は他の誰よりもこの危機を避けることができる能力を持っていたからです。
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もしグリーンスパンが住宅ブームが起こり始めた03年の段階で立ち上がって、「私は心配している。規制の長所について考える必要がある、リスク過剰の問題について考慮する必要がある」と言っていれば、多くのことは今と違っていたかもしれません。それでも危機は起きたかもしれませんが、ここまでひどいものにはなっていなかったでしょう。
グリーンスパンの他にも、市場の効率化ばかりを説きすすめたすべての経済学者、規制をはぎとろうと必死になったすべての政治家が犯人です。共和党上院議員フィル・グラムはグリーンスパンに次ぐ悪役でしょう。彼は大恐慌時代の教訓から生まれた金融規制、「グラス・スティーガル法」で定められた銀行業と証券業の分離規定の緩和に中心的な役割を果たしました。市場の金融商品規制も行なわないようにしたのです。

この後には、グリーンスパンと最後に会話したのは01年であること、それはグリーンスパンのブッシュ減税支持を批判したクルーグマン記事への彼の抗議の電話であったこと、非常に不快な電話であり、それ以来口を利いていないことが語られている。

・・・人々の生活をみても、新自由主義の恩恵を見つけるのは難しい。格差をここまで異常に拡大させた元凶は新自由主義です。第二次世界大戦後の25年の方が、その次の25年よりも経済は安定していたのです。
(インタビュアー: しかし、新自由主義経済を標榜していたレーガン政権下で、教授は経済諮問委員会の上級エコノミストを務めていましたね)
私は当時国際部にいて、ラテン・アメリカの債務危機の問題に追われており、アメリカの国内政策の中心部にはいませんでした。それでも今振り返って思うのは、あれだけ最高のレベルの人がいながら、どうして議論はああもロー・レベルであったのかということ(笑)。

このインタビュー記事で最もクルーグマンに斬り込んだ箇所と言える。

国家経済会議委員長のサマーズ、財務長官のガイトナーはよく知っているので、客観的に論評できないかもしれません。二人とも頭脳明晰です。ですが、二人とも慎重だから、思い切ったことが出来ない。もっと大鉈をふるえる人を入れた方がよかった。ジョセフ・スティグリッツはどこに行ったのでしょうか。

サマーズとスティグリッツ不倶戴天の仲であることを知っていてこういうこと言うかね。

(財務高官に任命されたら引き受けるか、という質問に対し)誰の目にも、それは悪い考えだと映るはずです(笑)。私は恐らく悪しき財務長官になりますよ。管理者になれる人間ではありませんし、外交の面でもだめです。・・・私は頼まれると拒否できない人間ですから、任命されなくてよかったと思います。アウトサイダーとして役に立ちたいと思っています。

昔は政権参加に色気を見せていたこともあったと思うが、今は自分が向いていないことを認識したようだ。管理者にも外交にも向いていないという点では、上述のスティグリッツCEA委員長を務めたこともあったが)も同様な気もする。


なお、記事では、この後、日本について触れた箇所も出てくるが(その一部は既に田中秀臣氏が抜粋している)、それについては機会があればまた後日紹介したい。