ナターシャ・リチャードソンは公営医療制度のせいで死んだのか?

というやや扇情的なタイトルのエントリがEconlogに上がっていた(注:ナターシャ・リチャードソンはカナダのスキー場での事故で3/18に死亡した女優。リーアム・ニーソン夫人であり、バネッサ・レッドグレーブの娘)。
デビッド・ヘンダーソンはこの中で、カナダの医療保険制度を先進国の中で最も全体主義的と批判している。というのは、たとえば英国の国民健康サービス(National Health Service)では、より高い料金を払ってより良い治療を受けられるオプションが認められているのに対し、カナダではそれが禁止されているからである。ヘンダーソンに言わせれば、英国には制度的な安全弁が存在しているが、カナダにとっての安全弁は米国になっているとのことである。ヘンダーソン自身のカナダに住んでいた父がその「安全弁」体験をしたとの由。
こうしたヘンダーソンの見解は、映画「シッコ」でカナダの医療制度を称賛したマイケル・ムーアの見方とは対照的と言える。


なお、表題の疑問に関してヘンダーソンは、ケベック州において医療ヘリコプターが存在しないこと、および脳損傷センターの水準が他に比べ低いことがリチャードソンの死につながった可能性を指摘する記事を引用している。ただ、コメント欄では、リチャードソンがいったん診療を拒否してホテルの自室に引き上げたこと、および死因が硬膜外血症であり救命の可能性が低かったことから、カナダの医療制度の不備を指摘する材料としては不適切、という意見も見られる。