金融業のGDP構成比上昇は危機の前触れか?

直近のクルーグマンop-edに次のような一節があった。

And the financial system wasn’t just boring. It was also, by today’s standards, small. Even during the “go-go years,” the bull market of the 1960s, finance and insurance together accounted for less than 4 percent of G.D.P.
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After 1980, of course, a very different financial system emerged. In the deregulation-minded Reagan era, old-fashioned banking was increasingly replaced by wheeling and dealing on a grand scale. The new system was much bigger than the old regime: On the eve of the current crisis, finance and insurance accounted for 8 percent of G.D.P., more than twice their share in the 1960s.

規制緩和により金融業が成長し、GDP構成比が上昇したことが今回の危機の伏線になったような書き方をしている。


では、日本はどうだったのだろうか? やはりバブル期に金融業のGDP構成比が膨れ上がり、それがバブル崩壊の前兆となったのだろうか? それを検証するために、最も古い期からデータの取れる1998年度国民経済計算確報のページから、経済活動別国内総生産(名目・暦年)のうちの金融・保険業の構成比を拾ってグラフにしてみた。

これを見ると、見事にバブル絶頂期の1989年にピークを付け、その後また低下している。つまり、バブル生成・崩壊と金融業のGDP構成比は軌を一にしている。


…と話が綺麗に済めば良かったのだが、念のため別の年度の確報データ(2003年度直近の2007年度)を使って足元までを見てみると、少し違った様相が現れてくる。

実質ではなく名目のデータを使っているのに、SNA改定(68SNA→93SNA)や基準年改定により過去の値が随分変わってきてしまっている。2003年度データでは、1998年度データで見られた1989年のピークが消えて、1988年が極大値となっている。また、2003年度データでは、1989年以降いったん低下した構成比が1993年にまた上昇傾向に転じているのも大きな違いである。2000年には1988年のピーク値を抜き去り、2003年には7%にまで達している。
2007年度データでは2003年度データより1996-1999年の値が上方に乖離しているものの、2000-2003年の動きに両者に差はあまり無い。ここ数年はやや低下傾向にあるが、依然として6%台後半という過去最高に近い水準で推移している。


このグラフにさらに米国のデータを足したのがこちら。

これを見ると、1990年に日米で逆転が発生し、その後は日本を尻目にどんどん伸び続けていったことが分かる。
今回の危機を機に、クルーグマンが考えるようにまたこの比率は縮小に転じるのだろうか? そして日本の比率はどのように推移していくのだろうか? 興味深いところである。