2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

経済学はイノベーションに失敗しつつあるのか、成功しつつあるのか?

経済学の現状について、モハメド・エラリアンとノアピニオン氏が、ほぼ同時期にかなり対照的なブルームバーグ論説を書いている。 以下はエラリアンの4/27付け論説「Why Innovation Tends to Bypass Mainstream Economics」からの引用*1。 Mainstream economi…

スイス国立銀行の記録的利益はいかに分配されるか?

スイス国立銀行が昨年大きな利益を上げ、その内訳と分配を同行のJean Studer銀行委員会委員長(President of the Bank Council)が27日に開かれた第110回定時株主総会で説明している(H/T Mostly Economics)。 以下は利益の概要。 スイスフランの上昇を防ぐ…

35年目のダイアモンド=ディビッグモデル

フィリップ・ディビッグ*1が35年前のダイアモンド=ディビッグモデルを振り返る、というインタビュー映像がYoutubeに上がっている(Mostly Economics経由のUtopia – you are standing in it!経由)。ディビッグが所属するワシントン大学オーリンビジネススク…

ジョン・ベイツ・クラーク賞が見落としていること

前回エントリで紹介したA Fine Theoremエントリは、今回のジョン・ベイツ・クラーク賞を以下のように位置付けている。 This award strikes me as the last remaining award, at least in the near term, from the matching/market design boom of the past 2…

Parag Pathakの業績

2018年のジョン・ベイツ・クラーク賞を受賞したParag Pathakの業績をA Fine Theoremが紹介している。以下はそこからの抜粋引用。 Pathak is best known for his work on the nature and effects of how students are allocated to schools. ... ...The Bosto…

財政ルール:愛されやすく誤魔化しにくいものとすべし

というIMFブログ記事が上がっている(原題は「Fiscal Rules: Make them Easy to Love and Hard to Cheat」)。 以下はその冒頭。 Rules to contain lavish government deficits are most effective if countries design them to be simple, flexible, and en…

良き悪い理論

クリス・ディローが、ジョージ・オーウェルの「Good Bad Books」というエッセー(邦訳)に想を得て、良き悪い理論、悪しき良い理論、等について語っている。 A good bad theory is one that lacks solid microfoundations but which works (roughly) in an a…

海外からの科学者の流入は米科学界に損失をもたらすか? 波及効果の研究

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Does Scientist Immigration Harm US Science? An Examination of Spillovers」で、著者はAjay Agrawal(トロント大)、John McHale(アイルランド国立大)、Alex Oettl(ジョージア工科大)。 以下はun…

ZOZOTOWN経営陣の要望に応える欧米の左派政党

「Brahmin Left」とピケティが名付けた層が所得格差縮小の障害になっている、という話が話題になっている。ProMarketで「なぜ民主主義が格差縮小できないか:インテリ左翼のせいだ(Why Democracy Fails to Reduce Inequality: Blame the Brahmin Left)」と…

フィリップス曲線叩きに反論する5つのポイント

前回エントリでリンクしたTony Yatesは、Andolfatto=クルーグマン論争について以下の5点を指摘している。 Benati論文が指摘したような失業とインフレの間の相関の変動は、それ自体では、現代マクロモデルでフィリップス曲線を構成する総供給との関係の有無…

時変的なフィリップスの相関

気付くのが遅くなったが、ここやここで紹介したAndolfatto=クルーグマン論争にTony Yatesも反応し、表題のLuca Benatiの2007年論文(原題は「The Time-Varying Phillips Correlation」)を引き合いに出している。 以下は同論文の要旨。 We use complex demo…

ドッド=フランク法の中小企業への影響

というNBER論文をマイケル・ボルドーらが書いている(ungated版(昨年7月時点))。原題は「The Impact of the Dodd-Frank Act on Small Business」で、著者はMichael D. Bordo(ラトガース大)、John V. Duca(オーバリン大)。 以下はその要旨。 There are…

フォワードガイダンスと市場の完全性

「Forward Guidance」というそのものずばりのタイトルのNBER論文が上がっている。著者はMarcus Hagedorn(オスロ大)、Jinfeng Luo(ペンシルベニア大)、Iourii Manovskii(同)、Kurt Mitman(ストックホルム大)*1。 以下はその要旨。 We assess the powe…

進化する信認の下での物価水準目標

適応的学習理論で有名なSeppo Honkapohjaが、物価水準目標に同理論を適用した論文を書いている(関連VoxEU記事)。原題は「Price Level Targeting with Evolving Credibility」で、著者はSeppo Honkapohja(アールト大)、Mitra Kaushik(バーミンガム大)。…

ロドリック「1990年代に世界経済と国内経済・社会の主客転倒が生じた」

昨日紹介したロドリックインタビューから、その他のロドリックの発言の概要をまとめてみる。 グローバル化は相異なるレントシーカー集団の相対的な力関係を変え、レントシーキングの土俵も変わったと思うが、レントシ−キング自体が増加したかどうかは分から…

ロドリック「貿易協定はWTOを境に変質した」

昨日紹介したサマーズ論説の貿易協定無罪論とは対照的に、ダニ・ロドリックがProMarketインタビューで貿易協定への批判を繰り広げ、併せて貿易協定を支持する経済学者を指弾している。 Q: In a recent paper, you argue that contrary to the prevailing vie…

トランプの貿易政策がうまくいかない5つの理由

「Donald Trump trade threats lack credibility」という論説をサマーズが書いている。 以下はその冒頭。 As the possibility of a trade war between the US and China looms, threats and counter-threats are hurled back and forth and markets gyrate, …

いかにしてクエーカー教徒は値札を発明することにより思いがけずも経済的イノベーターになったか

というaeonのビデオ解説記事をMostly Economicsが紹介している。 Belying its simplicity and ubiquity, the price tag is a surprisingly recent economic development. For centuries, haggling was the norm, ultimately developing into a system that r…

中国におけるサイズとバリュー

というNBER論文をスタンボーらが書いている(SSRNでungated版が読める)。原題は「Size and Value in China」で、著者はJianan Liu(ペンシルベニア大)、Robert F. Stambaugh(同)、Yu Yuan(上海交通大学)。 以下はその要旨。 We construct size and val…

海外からの安全資産需要とドル相場

というNBER論文が上がっている(ungated版にリンクしたスタンフォード大のサイト)。原題は「Foreign Safe Asset Demand and the Dollar Exchange Rate」で、著者はZhengyang Jiang、Arvind Krishnamurthy、Hanno Lustig(いずれもスタンフォード大)。 以下…

低リスクの初産を帝王切開にすることが健康に及ぼす影響

デビッド・カードらが表題のNBER論文を上げている(本文も読める)。原題は「The Health Effects of Cesarean Delivery for Low-Risk First Births」で、著者はDavid Card(UCバークレー)、Alessandra Fenizia(同)、David Silver(プリンストン大)。 以…

欧州企業における資源の誤配分:制約、企業特性、および経営決定の役割

というNBER論文をGorodnichenkoらが上げている(ungated版)。原題は「Resource Misallocation in European Firms: The Role of Constraints, Firm Characteristics and Managerial Decisions」で、著者はYuriy Gorodnichenko(UCバークレー)、Debora Revol…

オバマ硬化症は経済に後遺症をもたらしたか?

サマーズが、かつて自らがNEC委員長を務めたオバマ政権の経済的な負の遺産の有無について、EurosclerosisならぬObamasclerosisという些か刺激的な言葉を使って論じている。 以下はその冒頭。 The Wall Street Journal’s Greg Ip, reviewing the Trump admini…

フィリップス曲線とルーカス批判

1週間前に紹介したクルーグマンのAndolfatto批判に、David Glasnerも表題のエントリ(原題は「The Phillips Curve and the Lucas Critique」)で反応していた(ただしAndolfattoの反論を読む前の反応だったらしく、そちらには言及していない)。 その末尾で…

人口動態と自動化

ダロン・アセモグル(MIT)とPascual Restrepo(ボストン大)のコンビが、1年前に紹介した論文を発展させた表題のNBER論文を上げている(原題は「Demographics and Automation」、ungated版はこちら)。以下はその要旨。 We argue theoretically and documen…

超渋滞なんて存在しない

「Does Hypercongestion Exist? New Evidence Suggests Not」というNBER論文が上がっている。著者はMichael L. Anderson(UCバークレー)、Lucas W. Davis(同)。 以下はその要旨。 Transportation engineers are taught that as demand for travel goes up…

為替介入再論

というNBER論文が上がっている(チリ銀行主催の2017年のカンファレンス向けのパワポ資料、著者のサイトのungated版)。原題は「Foreign Exchange Intervention Redux」で、著者はRoberto Chang(ラトガーズ大)。 以下はその要旨。 Received wisdom posits t…

金融政策の国際的な波及

NY連銀のこちらのページでInternational Banking Research Network(IBRN)なる各国中銀の研究ネットワークが紹介されており、そのネットワークが手掛けるプロジェクトの筆頭に「The international transmission of monetary policy: Financial linkages and…

内生的な不確実性

という論文(原題は「Endogenous Uncertainty」)がFed in Printに上がっている。著者はAndrea Carriero(ロンドン大)、Todd E. Clark(クリーブランド連銀)、Massimiliano Marcellino(ボッコーニ大)。 以下はその要旨。 We show that macroeconomic unc…

アデア・ターナー元FSA長官が立憲民主党の経済顧問に就任へ

英国の金融サービス機構(FSA)長官を務め、近著「債務、さもなくば悪魔」でヘリコプターマネー政策を提唱したアデア・ターナー氏が、立憲民主党の経済顧問に就任することが明らかになった。実現すれば、アベノミクスによる金融緩和に反対してきた立憲民主党…