スイス国立銀行の記録的利益はいかに分配されるか?

スイス国立銀行が昨年大きな利益を上げ、その内訳と分配を同行のJean Studer銀行委員会委員長(President of the Bank Council)が27日に開かれた第110回定時株主総会説明している(H/T Mostly Economics)。
以下は利益の概要。

  • スイスフランの上昇を防ぐ近年の金融政策による外貨購入で積み上がった外貨準備を、各種資産や通貨に分散投資しているが、過去1年にスイスフランが特にユーロに対して大きく減価したほか、世界の株式市場が上昇したため、記録的な利益が出た。
  • 2017年末の外貨準備はおよそ7440億スイスフラン
  • 2017年のスイス国立銀行の利益は540億スイスフラン
    • 為替相場と株価による利益が430億
    • 利子・配当収入が130億
    • 金利上昇傾向に伴う債券下落でマイナス60億
    • 外貨準備のポジションによる利益は計500億
    • 保有する金の評価益が30億、当座預金のマイナス金利収入が20億

以下は分配の概要。

  • 利益の分配は国立銀行法で厳格に定められている。
  • 外貨準備引当金(provisions for currency reserves)積み立てが最優先。
    • この引当金は株主資本の最重要項目。現在および将来のリスクに備える、という位置づけで、バランスシートが膨れ上がっている現在は特に重要。
    • 額は名目GDP成長率によって決まるが、最低でも前年末の引当金総額の8%を引き当てる必要。2017年はその額が適用され、50億を積み立てた。
  • 引き当て後の分配可能利益に、分配準備(distribution reserve、前年の損益の繰越金)を加えたものが純損益になる。純利益が生じた場合は、株主資本の6%を超えない額が配当金になる。2017会計年度では最大額の150億が支払われる。
  • 配当支払い後の純利益の1/3が連邦、2/3が州に属する。連邦財務省スイス国立銀行の間の取り決めにより、2017年は連邦と州を合わせて20億を分配し、残りは分配準備に回す。分配準備の現在の残高は680億。これはスイス国立銀行の連邦と州に対する毎年の利益分配を平滑化するバッファの役割を果たす。