というスイス国立銀行のレポート(SNB Economic Note)をMostly Economicsが紹介している。原題は「Comparing monetary policy approaches of five central banks」で、著者はFlorian Böser、Antoine Martin、Sabrina Stadelmann。
以下はその要旨。
This note discusses the approaches of the Federal Reserve, European Central Bank, Bank of England, Sveriges Riksbank and Swiss National Bank to implementing monetary policy. Interestingly, the current approaches chosen by these central banks cover all stylised options suggested by the well-established theoretical framework of Poole (1968). The different choices can be explained by specific implementation objectives and institutional settings.
(拙訳)
本レポートは、FRB、欧州中央銀行、イングランド銀行、スウェーデン・リクスバンク、およびスイス国立銀行が金融政策を実施するアプローチを論じる。興味深いことに、これらの中銀が選択したアプローチは、定評あるプール(1968*1)の理論的枠組みで提示された様式化された選択肢を網羅している。異なる選択は、個々の実施目的と制度設計で説明できる。
以下は論文の図。

準備預金の水準が低い場合は、需要曲線は中銀貸出金利で概ね平坦になる。準備預金の水準が高い場合は、準備預金は付利金利で概ね平坦になる。その中間では需要曲線は急速に立ち上がり、少量の供給量の変化が金利を大きく動かす。
フロアシステム(floor system)では、需要曲線の低い金利の部分で金融政策が運用される。これには、図にあるように、需要曲線が立ち上がるところに近いところで運用する供給Bと、遠いところで運用する供給Aの2種類が考えられる。どちらを選ぶかは、フロアシステムを維持しつつバランスシートをなるべく小さくしたい、などといった中銀の事情による。
需要曲線の傾きが急な中間部で運用する金融政策は、貸出金利と付利金利をそれぞれ上下限とするコリドーシステム(corridor system)となる(図の供給C)。
需要曲線の高い金利の部分で金融政策を運用するのはシーリングシステム(ceiling system)である(図の供給D)。
レポートでは、スイス国立銀行を供給A、FRBを供給B、ECBを際まで攻めた供給B、リクスバンクを供給Cに分類している。
BOEは見方によって供給Bにも供給Dにもなるという。というのは、短期レポ(Short-Term Repo Facility=STR)と長期レポ(Indexed Long-Term Repo Operations=ILTR)における週次貸出金利は政策金利(=付利金利)に近く、翌日物金利は政策金利より高いため、どちらをプールの枠組みにおける貸出金利として捉えるかで話が変わってくるからである。ただ、通常時にはSTRとILTRが実際の貸出制度として機能しているため、BOEは事実上シーリングシステムのようなものであるとも言えよう、とレポートでは位置付けている。
スイス国立銀行が供給Aを保っているのは、バランスシートを減らすために必要な大規模な公開市場操作の弊害を恐れているため、とのことである。一方、FRBは量的引き締め(QT)を進めており、その際に供給主導(supply-driven)の方法を取っているとの由。それに対しECBとBOEは需要主導(demand-driven)の手法でQTを進めているという。需要主導においては、銀行に市場ベースの金利を発見させるインセンティブを持たせることになる。また、需要主導では、金利を動かすために必要な準備預金の量を見積もる必要がない、とのことである。
リクスバンクはコリドーシステムで粛々とQTを進めているとの由。
この分類では、FRBの後を追い掛けている日銀もやはり供給Bということになろうか。
中銀の長期のバランスシート:マクロの観点 - himaginary’s diaryなどで紹介したように金融危機後のあるべき準備預金の量については各中銀ともに頭を悩ませているところであるが、このプールの枠組みは(論文が言うように単純化され過ぎてはいる(oversimplification)ものの)確かに一つの有用な視点をもたらしてくれるように思われる。