というIMFブログ記事が上がっている(原題は「Fiscal Rules: Make them Easy to Love and Hard to Cheat」)。
以下はその冒頭。
Rules to contain lavish government deficits are most effective if countries design them to be simple, flexible, and enforceable in the face of changing economic circumstances.
In new analysis, we look at fiscal rules in over 90 countries and, based on their experiences, find that the rules put in the place over the last three decades often were too complex, overly rigid, and difficult to enforce.
(拙訳)
野放図な財政赤字を抑え込むルールは、単純で柔軟で、変化する経済情勢の中でも執行可能なものに設計された場合に最も効果を発揮する。
新たな分析で我々は、90ヶ国以上の財政ルールを調べ、それらの国の経験に基づき、過去30年間に導入されたルールは複雑過ぎて過度に厳格で、執行が難しいものが多かったことを突き止めた。
過去に成功したルールの主な特徴として記事では以下の4つを挙げている。
- ルールのカバレッジが広いこと。即ち、抜け穴の可能性を減らし、財政のすべてと言わないまでもほとんどをカバーすること。
- 好況時に国に貯蓄を促す設計。例えば、歳入の棚ぼた的な増加を全部使ってしまうような大規模な支出を防ぐ仕組み。
- 健全な経済学の原理に基づく財政総額の制限。例えば、財政責任を促すため、債務上限はあまり高くしてはいけない。しかし、必要な公共インフラを整備したり大きなショックの経済的影響を相殺するといった望ましい政策が実行できるように、低くし過ぎてもいけない。
- 自然災害のような予期せぬ出来事に財政が対応できるような正確な例外規定。
財政ルールを成功させるためには、そのほかに、政治的なバックアップ、ならびに、財政委員会のような財政の透明性と説明責任を高める支援機関が必要、とも記事は述べている。財政委員会は財政政策を評価する番犬的な役割を果たし、近年では欧州の大半の国が設立したという。
記事はまた、過去10年間に柔軟性と執行可能性を増した第二世代のルールが登場したが、複雑性が増した割りには効果が不明、と最近の動きに対し厳しい評価を下している。そうした欠点を補うため、これからのルールは以下の三原則に沿うべし、と記事は提言している。
- 一連のルールが一貫しており、必要最低限に絞られていて、債務の持続可能性を保証するものになっていることを確実にする
- 財政ルールは、中期の財政政策の経路を設定する債務ルールと、年次の財政の決定指針となる歳出ルールや財政均衡ルールのような少数の運用ルールとを共に備えている必要がある。改革の際には、ルールが重複していないこと、互いに齟齬をきたさないことを確実にすべし。
- ルールを遵守するインセンティブを創り出す
- 研究結果によれば、政府がルールを順守する期間は半分程度。ルール順守を促すため、目に見える便益をもたらすと同時に、順守しなかった場合のコストを高くすべし。金融的な制裁はあまり信頼が置けない半面、財政委員会により評判上や政治上のコストを引き上げる、という最近のやり方は有望である。
- 簡明さを犠牲にすることなく適切な柔軟性を持たせる
- 財政均衡ルールのように、経済ショックへの対応時に目標から乖離することを認めるルールは、複雑で実行が難しい場合が多い。歳出ルールの方が柔軟性と簡明性のバランスが良い。