というNBER論文が上がっている(チリ銀行主催の2017年のカンファレンス向けのパワポ資料、著者のサイトのungated版)。原題は「Foreign Exchange Intervention Redux」で、著者はRoberto Chang(ラトガーズ大)。
以下はその要旨。
Received wisdom posits that sterilized foreign exchange intervention can be effective by altering the currency composition of assets held by the public. This paper proposes an alternative channel: sterilized intervention may (or may not) have real effects because it changes the net credit position of the central bank vis a vis financial intermediaries, thereby affecting external debt limits. This argument is developed in the context of an open economy model with domestic banks subject to occasionally binding collateral constraints. Intervention has real effects if and only if it occurs when the constraints bind; at such times, a sterilized sale of official reserves relaxes the constraints by reducing the central bank's debt to domestic banks, freeing resources for the latter to increase the supply of credit to domestic agents. The analysis yields several noteworthy implications for intervention policy, official reserves accumulation, and the interaction between intervention and monetary policy.
(拙訳)
一般に受け入れられた概念によれば、不胎化為替介入は、人々が保有する資産の通貨構成を変えることにより効果を発揮し得る。本稿はそれとは別の経路を提示する。それは、不胎化介入は、金融仲介機関に対する中銀の純貸付ポジションを変え、それによって対外債務の上限に影響するために実質的な効果を生じる(もしくは生じない)、というものである。この議論は、国内銀行が担保制約に時折り引っ掛かる開放経済モデルにおいて展開される。介入は、制約に引っ掛かる時に行われる場合、そしてその場合のみ、実質的な効果を生じる。そうした時には、公的準備の不胎化された売却は、中銀の国内銀行に対する債務を減らすことによりその制約を緩和し、後者のリソースを解放して国内の主体への信用供給を増加させる。本分析は、介入政策、公的準備の蓄積、ならびに介入と金融政策の相互作用について幾つかの注目すべき含意を提供する。
この論文は、金融が事実上ドル化された南米のような経済(そこでは銀行は資本を家計から調達するとともに海外投資家から借り入れを行う)において、中銀が債券を発行してドルを買う形の不胎化介入を考えている(その際、銀行にとってその債券の購入と国内融資は完全な代替になることを前提している)ので、先進国の為替介入への直接的な含意は乏しいかもしれない。