2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

集約と集計の違い

Diane Coyle*1が自ブログでアルフレッド・マーシャルの「Elements of the Economics of Industry」の一節を引用している(H/T Economist's View;「ミクロ的基礎付けについて(On Microfoundations)」と題したエントリでその引用を孫引きしている)。同書の…

単位根論争再び

6年ほど前にクルーグマンとマンキューの単位根を巡る議論を紹介したことがあったが、同様の議論が再燃している。きっかけは、ロジャー・ファーマーの4/16エントリ。そこでファーマーは、1955第1四半期〜2014年第4四半期の実質GDPの対数値を定数項とタイムト…

コント:ポール君とグレッグ君(2015年第5弾)

久々に両者の間で対話が成立。 グレッグ君 日曜のNYT論説で貿易支持論を書いたよ。 ポール君 うむ、グレッグ君の書いたものを読んで訳が分からなくなった。彼は本当にTPPについて何も読んでいないのかな? 彼は議論の本質がまったく分かっていないのかしらん…

テイラーの歴史認識問題

ジョン・テイラー批判の続き。今日は、23日エントリで触れたDavid Glasnerの批判を取り上げてみる。批判の対象となったのは、テイラーが自ブログで紹介したIMFセミナーでの講演。 Glasnerはまず、1970年代の金融政策に関するテイラーの以下の認識に矛先を向…

間違いだらけのジョン・テイラー

2000年代前半のFRBの金融緩和の行き過ぎが住宅バブルを引き起こしたのか、という話の続き。ベックワースのリンクまとめから、今日はTony Yatesのジョン・テイラー批判を紹介してみる*1。Yatesは I think he’s wrong on every point. And I doubt many at all…

住宅バブルFRB責任論へのサムナーの疑問

昨日紹介したベックワースらの共著論文に、サムナーが2点の異議を挟んでいる。 (たとえ意図的ではないにせよ)健全な金融政策が部門間の不均衡を防ぐような印象を決して与えるべきではない。完全な名目GDP目標政策の下にあったとしても、2000年代前半に実際…

FRBが生産性上昇に適切に対処できなかったために住宅バブルが生じた?

昨日エントリで触れたベックワースは、George Selgin、Berrak Bahadirとの最近の共著論文に言及している。 以下はその論文「The productivity gap: Monetary policy, the subprime boom, and the post-2001 productivity surge」の要旨。 It is widely belie…

厳格な銀行規制を支持する抗しがたい論拠

以前、小生は以下のようなことを書いたことがあった。 また、2000年代前半の低金利が住宅バブルの原因として批判されているが、これはテイラーだけでなく、ベックワースがかねてより唱えているほか、ここで紹介したように、ECBの研究者による実証報告もなさ…

価格の下2桁でどれだけ売りたいかが分かる

と題したDigitopoly記事(原題は「The last two digits of a price can signal your desperation to sell」)で、Joshua Gansが興味深い研究を紹介している。 In a new paper, Matt Backus, Thomas Blake and Steve Tadelis look at this issue within the c…

インドの子供はなぜ背が低いのか?

というNBER論文が出ている(ungated版)。原題は「Why Are Indian Children So Short?」で、著者はSeema Jayachandran(ノースウエスタン大)、Rohini Pande(ハーバード大)。 以下はその要旨。 India's child stunting rate is among the highest in the w…

供給を引き上げるには需要を喚起する必要がある時もある

というGreg IpのWSJ記事(原題は「Sometimes, Boosting Supply Requires More Demand」)をEconomist's Viewが紹介している。 以下はその引用部。 The Federal Reserve, everyone agrees, can boost growth in the short run. But can it do it over the lon…

粘着的価格とマクロ経済学

粘着的価格モデルに関するノアピニオン氏のブルームバーグ論説にStephen Williamsonが噛みつき、それに対しノアピニオン氏が、Williamsonの言っていることは良く分からん、と腐すという一幕があった。 両者の違いは、乱暴に一言でまとめると、以前ここで紹介…

AIIBと英ソ通商協定

アジアインフラ投資銀行(AIIB)にイギリス、ドイツが抜け駆け的に参加し、米国が歯噛みをしている状況を見て、大学時代に世界史で習った一場面を思い出した。以下は、「世界の歴史 14 第一次大戦後の世界」からの該当のエピソードの引用。 異なった体制の下…

コント:ポール君とグレッグ君(2015年第4弾)

第1弾と同様、マンキューはサックスの論説をリンクしただけであり、しかもクルーグマンは反応していないが、一応拾っておきます。 グレッグ君 ジェフ・サックスがデビッド・キャメロンを擁護しているよ。 リンクされたサックスのProject Syndicate論説「Krug…

金融政策は貿易に影響するか?

という論文(原題は「Does Monetary Policy Matter For Trade?」)を一昨日エントリで紹介した論文の著者のコンビ(香港中文大学のKin-Ming WongとTerence Tai-Leung Chong)が書いている。 以下はその要旨。 There is a large literature on the effect of …

中国の金融政策を何で見るか?

という論文(原題は「What Measures Chinese Monetary Policy?」)を寧波ノッティンガム大学のRongrong Sunが書いている。 以下はその要旨。 This paper models the PBC’s operating procedures in a two-stage vector autoregression framework. We decompo…

為替目標よりインフレ目標の方が宜し

という主旨の論文を香港中文大学の2人の研究者が書いている。論文のタイトルは「What Should Central Banks Target? Evidence on the Impact of Monetary Policy Regimes on Economic Growth」で、著者はKin-Ming Wong、Terence Tai-Leung Chong。 以下はそ…

ハイエクの金融政策の提言は矛盾していたのか?

という論文をチェコの2人の研究者が書いている。論文の原題は「Were Hayek's Monetary Policy Recommendations Inconsistent?」で、著者はMartin Komrska(プラハ経済大学)、Marek Hudík(カレル大学)。 以下はその要旨。 Contrary to the received view, …

鴨の群れが経済学について教えてくれること

昨日エントリでは、デロングないしサイモン・レン−ルイスのエントリを受けたクルーグマンのミクロ的基礎付けに関する議論を紹介したが、今日はThe Fiscal TimesでのMark Thomaの議論を紹介してみる。 彼はまず、ミクロ的基礎付けの歴史を以下のように振り返…

なぜクルーグマンは新貿易理論のミクロ的基礎付けを行ったのか?

デロングのEquitable Growthエントリをきっかけとして、マクロ経済学のミクロ的基礎付けに関する議論が再び起こった(この問題に関するエコノブロゴスフィアでの議論はこれまでも何度も起きている。例:ここ、ここ)。デロングのエントリの主旨は以前ここで…

ユーロ圏の期待インフレ率はサプライズで下がった

という趣旨の論文をイタリア銀行が出している。論文のタイトルは「Inflation surprises and inflation expectations in the euro area」で、著者はMarcello MiccoliとStefano Neri。 以下はその要旨。 Since 2013 the inflation rate in the euro area has f…

コント:ポール君とグレッグ君(2015年第3弾)

ランド・ポールの立候補をきっかけにした2人のエントリ。 ポール君 ネイト・コーンがランド・ポールがリバタリアンとしては勝てないと言っている。というのは、事実上リバタリアンというものがいないからだとの由。それは本当のことだ。ランド・ポールはいか…

投資と株式リターンのクロスセクション

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Investment and The Cross-Section of Equity Returns」で、著者はGian Luca Clementi(NYU)、Berardino Palazzo(ボストン大)。 以下はその要旨。 When the neoclassical model of investment is ser…

経済ブログの意義

昨日紹介したタバロックのブログ論を受けて、Mostly EconomicsのAmol Agrawalが以下のように書いている。 Some people avoid blogs and call it non-serious research. The reality could not be more false with most prominent economists of the world jo…

学術誌は利口さに報い、政策は知恵を要求する

とアレックス・タバロックがquora.comに書いている(H/T Mostly Economics)。 In an economics journal the goal is to prove that the model works, given the assumptions. The realism of the assumptions doesn't matter much; the question is does th…

バーナンキ=サマーズ論争のクルーグマン裁定

長期停滞を巡ってネット上でバーナンキとサマーズが論争を交わした。クルーグマンが彼なりの視点でその論争を整理しているので*1、以下にその概要をまとめてみる。 バーナンキのサマーズ批判は以下の通り: 米国が長期停滞に直面しているという最も説得的な…

フリードマンは何を間違えていたのか?

前回エントリでデロングがフリードマンを批判したProject Syndicate論説を紹介し、その末尾でDavid Glasnerがデロングに異を唱えたことに触れたが、別にGlasnerはフリードマンを擁護したわけではない。むしろ、Glasnerはデロング以上にフリードマンに批判的…

フリードマンの勝利が大不況を深刻化させた

デロングがアイケングリーンの以下の近著の主張をProject Syndicateで紹介している。Hall of Mirrors: The Great Depression, the Great Recession, and the Uses-and Misuses-of History作者: Barry Eichengreen出版社/メーカー: Oxford Univ Pr発売日: 201…

中銀のバランスシートが財政面の支援を必要とする時

NY連銀のMarco Del Negroとプリンストン大のクリストファー・シムズが、「When Does a Central Bank’s Balance Sheet Require Fiscal Support?」というNY連銀スタッフレポートを書いている(H/T Economist's View経由のNY連銀ブログ)。 以下はその要旨。 Us…

日本の経済学界をノーベル経済学賞に推薦する動きが表面化

昨年、憲法九条を保持している日本人をノーベル平和賞に推薦する動きがあったが、今年は、日本の経済学界をノーベル経済学賞に推薦する動きが出ている。その動きを掴んだ本紙は、同運動を主唱する経済学者への直撃取材を試み、話を聞くことができた。 同氏は…