コント:ポール君とグレッグ君(2015年第5弾)

久々に両者の間で対話が成立。

グレッグ君
日曜のNYT論説で貿易支持論を書いたよ。
ポール君
うむ、グレッグ君の書いたものを読んで訳が分からなくなった。彼は本当にTPPについて何も読んでいないのかな? 彼は議論の本質がまったく分かっていないのかしらん?
個人的にはどちらかと言うとこの協定に反対だが、これが共和国の終わりとまでは思わないし、支持側の議論(主に戦略的な話だが)も理解できる。しかしながら、完全に明らかなことが一つあって、それは、比較優位により貿易は良いことで、保護主義者は馬鹿だ、というような講義を本棚から引っ張りだしてくるのは、的外れで失礼なことだ、ということだ。というのは、これは貿易協定ではないからだ。問題は知的財産権と紛争解決法であり、恩恵を大きく蒙るのは医薬品会社と、政府を訴えたい企業だ。
議論すべきはそういうことだ。デビッド・リカードは関係無い。
グレッグ君
TPPは貿易協定だ。だが奇妙なことに、ポール君はTPPは本当は貿易に関する話ではないと思っている。しかし、ジェイソン・ファーマンCEA委員長は次のように書いている

TPPの出発点は、米国と貿易相手国の関税の非対称性にある。我々の貿易で加重平均した適用関税率は1.4%で、輸入の70%は既に我々の経済に非課税で入ってきている。対照的に、我々のTPPの相手国の関税率の単純平均は、我々の対応する数字より1.5%ポイント高い。TPP参加国の中には平均関税率が我々より4%ポイントも高い国もある。しかもこの数字は特定産業における顕著な差を隠してしまっている。米国は、マレーシアへの自動車輸出で30%、ベトナムへの農産物の輸出で40%もの関税に直面している。また、多くのTPP参加国は著しく高い非関税障壁も設けている。特に米国が強い比較優位性を持つサービス貿易の分野がそうだ。結果として、TPPは米国の輸出に対する外国の障壁を主に弱めることになる。・・・
TPPの恩恵に関する最も包括的な推計は、Peter Petri、Michael Plummer、Fan Zhaiによるもので、彼らは18部門24地域の計算可能一般均衡モデルを用い、関税、非関税障壁、対外直接投資規制など20以上の相異なる分野における政策変更をシミュレートした。彼らの結果によれば、2025年までに、TPPは米国の所得を年率0.4%、2007年ドルにして770億ドル押し上げる。ただし実際の推計は、協定の詳細やモデルの仮定の違いによって幾分か変わる。欧州連合によれば、T-TIPによって米国は同様の利益を得る。この利益は小さいという者もいるが、毎年770億ドルの利益を見過ごすように助言したら、私の経済顧問としての地位は危うくなるだろう。


ちなみにスティグリッツもTPPについてクルーグマンと概ね同様の理由で反対している。ただし彼はより強硬な反対派である(cf. ここ)。