2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

収入と成績の関係

について書いたマンキューブログのこのエントリの内容を簡単にまとめておく。 NYTのデビッド・レオンハートによれば、たとえ大学入学試験で同じ点数を取ったとしても、貧乏な学生は金持ちの学生に比べて不利な環境でその点数を取ったわけだから、よりポテン…

電力小売市場自由化によって電力料金は低下するか?・補足

昨日のエントリでは、電力の標準提供サービス(Standard Offer Service=SOS)についてメイン州の電力会社のHPから説明を拾ってきたが、その入札はどうなっているのだろうか、というコメントを頂いた。そこで、今日はその入札について触れた部分をネットから…

電力小売市場自由化によって電力料金は低下するか?

というテーマに関する論文(ワーキングペーパー)をダラス連銀の研究者が出した(原題は「Did Residential Electricity Rates Fall After Retail Competition? A Dynamic Panel Analysis」;Mostly Economics経由)。 以下はその要旨。 A key selling point …

野鴨を追い掛ける

wild-goose chaseというのは英語で無駄な追求という意味だが、その名もNicholas Wildgooseという石油トレーダーが、同僚のJames Dyerと共に、米先物取引委員会(CFTC)から相場操縦の疑いで提訴された(cf. WSJ日本語記事)。 Econbrowserでジェームズ・ハミ…

IMF専務理事がもはや欧州の指定席とはならない3つの理由

ここで紹介したブログエントリでEUのギリシャ危機対応を痛烈に批判したジェフリー・フランケルが、Project Syndicateで表題の件について書いている(Economist's View経由)。それによると、その3つの理由とは以下の通り。 過去10年間、多くの新興大国は、自…

600年の時を超えた憎悪

「憎悪の地理学:戦間期のドイツの反ユダヤ主義は中世のユダヤ人大量虐殺に如何に影響されたか」と題された記事がvoxeuに掲載されていた(原題は「The geography of hate: How anti-Semitism in interwar Germany was influenced by the medieval mass murde…

政府債務の算術

最近3箇所のブログで政府債務に関する簡単な計算を行っているのを目にしたので、メモ代わりに簡単にまとめておく。 クルーグマン 現在の米国の債務の対GDP比率は75%であり、次年度の財政赤字の対GDP比率は7.5%となる。また、名目成長率は4%が見込まれる。 今…

コアインフレ率なんかいらない?

とジェームズ・ブラード・セントルイス連銀総裁が主張している。直近では5/18にNYUで「Measuring Inflation: The Core Is Rotten」と題した講演を行っている。その講演内容は、日本語ではロイターが報じたほか、こちらのブログで要約がなされている。 そこで…

最も硬直的な価格

スティーブ・ワルドマンが、面白い仮説を立てている。その論理は以下の通り。 経済学者は価格の硬直性、とりわけ賃金の硬直性を問題にする。しかし、賃金よりももっと硬直的な価格がある。それは過去の支出の価格、すなわち債務の名目価格である(ここまでは…

原発事故と金融危機の共通点

ティム・ハーフォードが原発事故――ただし福島ではなくスリーマイルのケース――と金融危機との共通性について語っている(The Big Picture経由)。 ...as I read Perrow’s book, I realised that it could have been written about the financial crisis. That…

ドッド・フランク法の下ではリーマンはどのように処理されていたか?

表題の件に関して米連邦預金保険公社(FDIC)が仮想的なシミュレーションレポートを出したが*1、それを巡ってNaked Capitalismのイブ・スミスとEconomics of Contempt(EoC)という2人のブロガーの間で激しい応酬があった。 これまでの議論の経過は以下の通…

高いインフレ目標と中央銀行の独立性の関係

オーストラリアの経済学者ジョン・クイギンが、表題の件に関してユニークな議論を展開している(Economist's View経由)。 Linking to Bennett McCallum with some puzzlement a while back, Brad DeLong asked why a higher inflation target could be seen…

欧州は今後ソブリン債をどのように扱うべきか

5/14に紹介したエントリの後続エントリで、ジェフリー・フランケルが以下のような提案をしている。 The eurozone should adopt a rule that whenever a country violates the fiscal criterion of the Stability and Growth Pact (say, a budget deficit in …

オバマ政権の景気刺激策は百万の民間の雇用を破壊した・続き

昨日取り上げた論文についにクルーグマンも反応した。そこで彼は、(昨日紹介した)ノアピニオン氏のブログエントリに加え、ディーン・ベーカーのブログエントリにリンクしている。そちらのエントリでベーカーは、かなり突っ込んだ論文批判を展開しているの…

オバマ政権の景気刺激策は百万の民間の雇用を破壊した

という主旨の論文にマンキューがブログでリンクした(論文のタイトルは「The American Recovery and Reinvestment Act: Public Sector Jobs Saved, Private Sector Jobs Forestalled」で、著者は西オンタリオ大学のTimothy Conleyとオハイオ州立大学のBill D…

コント:ポール君とグレッグ君(2011年第4弾)・補足

5/13エントリで考察したマンキュー=Reisの安定物価指数について追加の考察。 3資産以上の場合のxの完全な表式 5/13のエントリでは最初からαk≡1、λk≡λとおいて式を展開したが、xを導出するところまではその前提を置かなくても展開できる。 ここでその前提を…

サマーズ×サマーズ

NYTがサマーズのインタビュー記事を載せているが、手頃な長さなので訳してみる(Economist's View経由)。 インタビュアー 経済について夜中に冷や汗をかくようなことは何ですか? サマーズ 非熟練労働者の職は中長期的にどこからもたらされるのだろうか、と…

エミューと駝鳥

ハーバード大教授のジェフリー・フランケルが、ギリシャ問題への対応についてEUの当局者(とりわけECB)を痛烈に批判している。 フランケルは、EUの対応の失敗として以下の3点を挙げている。 そもそも2000年にギリシャの加盟を認めたこと。 ギリシャは地理的…

コント:ポール君とグレッグ君(2011年第4弾)

グレッグ君 豚がまた空を飛んだ、もとい、僕はポール君の意見に同意する。 このマンキューのエントリには既に道草にayakkaさんの訳が上がっているので、今日はこの辺に留めておく。 …というのも少し寂しいので、そのエントリで紹介されているマンキューの共…

軍事基地拡張の恩恵と負担

というレポートがリッチモンドFRBのHPに掲載されている(Mostly Economics経由)。 以下はその冒頭部。 The stars will soon align over Fort Bragg, N.C., and when they do, only the Pentagon will have more generals. That’ll be sometime this year wh…

欧米が150年掛けて構築して20年で破壊したもの

についてペルーの経済学者エルナンド=デ=ソト*1が書いている(Mostly Economics経由)。 During the second half of the 19th century, the world’s biggest economies endured a series of brutal recessions. At the time, most forms of reliable econo…

テイラーのルール対テイラールールたち

という論文(原題は「Taylor’s Rule versus Taylor Rules」)がテイラーブログで紹介されている。 論文の著者の一人であるヒューストン大学のDavid PapellがEconbrowserのゲストエントリでその内容を簡単に紹介しているが、簡単に言うと、本家のテイラールー…

ケインズは中央計画経済の支持者だったか?

先月末にケインズ対ハイエクのラップ対決の第2弾が公開され、早速bradexさんによって日本語字幕付きバージョンも作られた*1。 ただ、そこで物議を醸したのが、ビデオ中でハイエクがケインズを中央計画経済の支持者呼ばわりした点。Econospeakでバークレー・…

デフレ脱却と相転移のアナロジー・補足

昨日の貨幣数量方程式(MV=PY)に基づく経済システムの相転移のアナロジーについて、その後思いついたことを補足しておく。 ギブスの自由エネルギーと貨幣超過需要関数のアナロジーについて 昨日のエントリでも参考にしたキッテルでは、ギブスの自由エネルギ…

デフレ脱却と相転移のアナロジー

貨幣数量方程式(MV=PY)に関する日米の各論者の議論を読んでいて、ふと、この式を変形すれば貨幣の超過需要の関数になるのではないか、と考えた。具体的には、 G = PY - MV (1) としてGを定義した場合、右辺第一項は名目GDPであり、貨幣需要が発生する要因…

日銀の国債引き受けに関する議論の超簡単なまとめ

日銀の復興国債引き受けの是非が一部で話題になっている。予想されるように、リフレ派が賛成に回り、非リフレ派が反対に回るというのが基本的な構図になっている。 議論には主に二つの軸があって、一つは財源として機能するか否か、もう一つはデフレ脱却のリ…

金融部門の貸出残高がGDPの110%を超えたら要注意

という主旨の論文がMostly Economicsならびにvoxeuで紹介されている。著者はGraduate InstituteのJean-Louis Arcand、IMFのEnrico Berkes、UNCTADのUgo Panizzaの三人。 voxeuによると、論文の分析の概要は以下の通り。 First, we build a simple model find…

貨幣数量方程式は有用か?

という興味深いブログエントリをEconomist's ViewのサイドバーのNew link経由で見つけた(原題は「Is MV=PY useful?」;最近岩本康志氏と貨幣数量説に関する論争を繰り広げたkendochorai氏も早速反応している)。 ブログ主はMatt Rognlieで、プロフィル欄で…

ベーコンを待ちながら・続き

昨日のエントリには幾つかコメントを頂いたが、コメンターの中には、小生の引用部分だけを読んで、ノアピニオン氏が物理学(の一部の分野)を基準に経済学を居丈高に批判している、という感想を抱かれた方もいたようである*1。ただ、彼がそこで批判している…

ベーコンを待ちながら

ノアピニオン氏が自らの大学院での経済学学習体験について記したブログエントリが話題を集めている(Economist's Viewで紹介され、それを読んだクルーグマンやアーノルド・クリングが反応しているほか、同エントリ内で4/29付けProject Syndicate論説を引用さ…