5/13エントリで考察したマンキュー=Reisの安定物価指数について追加の考察。
3資産以上の場合のxの完全な表式
5/13のエントリでは最初からαk≡1、λk≡λとおいて式を展開したが、xを導出するところまではその前提を置かなくても展開できる。
ここでその前提を外した論文のモデルは
(1)'
(2)
(3)
(4)
(5)
となるが(5/13エントリの(1)式を(1)'式に置き換え)、(1)'式のλkを右辺に移項した上でθkを掛けて合計を取り、(2)式を適用すると
(6)'
同様に、(1)'式のλkを右辺に移項した上でwkを掛けて合計を取り、(3)式を適用すると
(7)'
(6)'(7)'式より
(8)'
2資産の場合は、これは論文の(A.10)式に帰着する。また、αk≡1、λk≡λとすれば、当然ながら5/13エントリの(8)式に帰着する。
中央銀行が正確に安定物価指数を固定できない場合
その場合は、5/13エントリの(3)式は以下のようになる。
(3)''
よって(7)式は次のようになる。
(7)''
これから(8)式は次のようになる。
(8)''
この時、中括弧の第一項の分散に比べて第二項の分散(および第一項と第二項の共分散)が十分に小さければ、元の(8)式で近似して構わないことになる。そうでなければ、特に第一項と第二項の共分散が複雑な形で効いてくることになる。
ポートフォリオ理論からの考察
5/13のエントリの(8)式は、εk空間において、CPIのウェイトと安定物価指数のウェイトをそれぞれλ:1−λの比率で加重平均して作成した「ポートフォリオ」の「リターン」が-xになることを示している。そして、その「ポートフォリオ」の分散が最小になるように安定物価指数のウェイトを定めているわけである。従って、{「ポートフォリオリターン」−「ポートフォリオ分散」}平面において、CPI、安定物価指数、その加重平均の3つのポートフォリオを描画すると、以下のようになる。
ここでCPIと安定物価指数を結ぶ曲線は、両ポートフォリオをユニバースとした効率的フロンティアであり、その最小分散点がεk全体の効率的フロンティアの最小分散点と一致するように安定物価指数のウェイトが定められる。その分散がGDPギャップxの分散である。また、その際、GDPギャップxの水準も同時に決定される。
イメージとしては、下図のように、εk全体の効率的フロンティアに両ポートフォリオの効率的フロンティアが接するように安定物価指数が平面上をスライドしていく感じになろう。