- グレッグ君
- 豚がまた空を飛んだ、もとい、僕はポール君の意見に同意する。
このマンキューのエントリには既に道草にayakkaさんの訳が上がっているので、今日はこの辺に留めておく。
…というのも少し寂しいので、そのエントリで紹介されているマンキューの共著論文で気が付いたことを補足。
この論文はマンキューの5/7付けの上記エントリの前に、既にMatt Rognlieの5/1ブログエントリで紹介されているが(そちらも道草でerickqchanさんの訳が上がっている)、そこでRognlieが強調しているのが、この論文で打ち出された安定物価指数(stability price index)なる物価指数のバスケットのウェイトが、CPIのウェイトとは相反関係になっている(=CPIでウェイトが高い商品はこちらではウェイトを下げる)点である。
論文ではAppendix2でこの点(および他の命題)を商品が2つの場合について証明しており、商品が3以上の場合はAppendix3で方向性を示すだけに留まっている。それは、彼らのモデルでは、2商品については解析解が求まるのに対し、3商品以上では解析解は求まらず、数値計算で解を求めるしかないためである。ただ、Rognlieが強調したウェイトの相反関係については、3商品以上でも解析的に示せそうなので、以下にそれを試してみる。
ここで論文のモデルは
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
という形になっている。ただしpkは商品kの価格、xはGDPギャップ、εkはショック項、θkはCPIにおける商品kのウェイト、wkは安定物価指数におけるウェイト、λは価格の伸縮性を表わすパラメータ(0<λ<1)、pはCPIである。なお、論文ではλは商品別のパラメータλkとなっているが、ここでは他の条件が同じ場合のwkとθkの関係を求めることを目的としているので、全商品で共通のパラメータとした。また、(1)式におけるGDPギャップxの係数は論文ではαkとなっているが、同様の理由によりここでは共通パラメータとし、単純化のため1と置いた。
論文では、中央銀行は安定物価指数を確実に目標にセットすることができるとしている((3)式)。そして、それによってGDPギャップxの分散を最小化することを中銀の目的としている。
(1)式にθkを掛けて合計を取り、(2)(4)式を適用すると
(6)
(1)式にwkを掛けて合計を取り、(3)(5)式を適用すると
(7)
(6)(7)式より
(8)
εkは互いに独立とし、その分散をσk2とすると、中銀が最小化すべきxの分散は次式の通りとなる。
(9)
今、他の条件が同じ場合のwkとθkの関係を求めたいのであるから、σk≡σとすれば、最小化すべきは、結局、
(10)
ということになる。ここでラグランジュの未定乗数法を用いて
(11)
をwkで微分したものがゼロになるとすると(ξ1、ξ2は未定乗数)
(12)
これをCPIバスケット中の商品を通じて合計し、(4)(5)式を適用すれば
(13)
が求まる(Kは商品の数)。これより
(14)
という相反関係が求められる。