Francis Dieboldが、表題のブログエントリ(原題は「Long Memory / Scaling Laws in Return Volatility」)で以下のように書いている。
The 25-year accumulation of evidence for long memory / fractional integration / self-similarity / scaling laws in financial asset return volatility continues unabated. For the latest see this nice new paper from Bank of Portugal, in particular its key Table 6. Of course the interval estimates of the fractional integration parameter "d" are massively far from both 0 and 1 -- that's the well-known long memory. But what's new and interesting is the systematic difference in the intervals depending on whether one uses absolute or range-based volatility. The absolute d intervals tend to be completely below 1/2 (0
*1。絶対ベースのdの区間推定値は完全に1/2を下回る傾向にある(0 *2。
ここで取り上げられているフラクショナル・インテグレーション過程については、こちらの日本語論文(稲田将一(2006) 「ウェーブレット分散を用いた金融時系列の長期記憶性の分析」、IMES Discussion Paper Series 2006-J-12)が分かりやすい。以下はそこからの引用。
次に、自己相関関数が緩やかに減衰していくデータを表現する別のモデルとして、フラクショナル・インテグレーション過程をとりあげる。時系列{xt}(t=1,2,…)をフラクショナル・インテグレーション過程として記述すると、実数dを用いて以下のようになる。
(1-L)dxt =ε . (16)
L はラグ・オペレータであり、Lhxt=xt-h となる。また、εt はホワイト・ノイズである。なお、(1-L)dは、以下の無限級数で記述される。
(1-L)d=1 - dL - (d(1-d)/2)L2 - (d(1-d)(2-d)/(3・2))L3 - … . (17)
以下では、フラクショナル・インテグレーション過程を、I(d)過程と記述する。
ここで、I(d)過程のパラメータd のとりうる値はどのような範囲にあるかを考える。既述のように、本稿では、長期記憶過程として、(1)定常、(2)自己相関に持続性のある過程であると定義している。データが定常であるという条件から、d のとり得る値は-1/2 < d <1/2となる(Granger and Joyeux [1980]、Hosking[1981])。
・・・
ここで、FGN過程で算出された(15)式と比較すると、I(d)過程のパラメータdとFGN過程のハースト指数Hの間には、以下の関係が成立することがわかる。
d = H - 1/2 . (21)
したがって、d が0 < d < 1/2の範囲にあるとき、(16)式で表現される I(d)過程{xt}は長期記憶過程となる。また、dが0に近ければ短期記憶過程に近く、dが1/2に近づくほど長期記憶の程度が大きいことになる。
FGN過程とは、フラクショナル・ガウシアン・ノイズ過程のことで、これについては日本語Wikipaediaに解説がある。
上述の通り、定常過程では-1/2 < d <1/2となるが、非定常過程を含めればdは1/2以上の値を取り得る。Dieboldのリンクしたポルトガル銀論文ではその点について以下のように記述されている(ただしここではパラメータはd+θ、時系列は{yt}として記述されている)。
In contrast to most of the existing tests, model (1) does not require that d+θ lies in the (-0.5, 0.5) interval in which {yt} is stationary and invertible. This outstanding property provides a considerable degree of generality in our analysis.
(拙訳)
既存の大半の検証とは対照的に、(1)式のモデルは、{yt}が定常的で反転可能となるd+θが(-0.5, 0.5)の範囲にあることを要求しない。この顕著な特性は、我々の分析に相当程度の一般性をもたらす。