日銀の国債引き受けに関する議論の超簡単なまとめ

日銀の復興国債引き受けの是非が一部で話題になっている。予想されるように、リフレ派が賛成に回り、非リフレ派が反対に回るというのが基本的な構図になっている。


議論には主に二つの軸があって、一つは財源として機能するか否か、もう一つはデフレ脱却のリフレ策として機能するか否か(岩本康志氏の表現を借りれば、レジーム転換が発生するか否か)、ということになるかと思う。


その軸を元に両者の議論をごく簡単に表形式にまとめると、以下のようになるかと思われる。

財源として機能? 積極派 消極派
ジーム転換できなかった場合 Yes デフレ脱却のきっかけとならなくても、財源として機能したことになる 財政規律弛緩の問題は残る
ジーム転換できた場合 No 財源として機能しなくても、デフレ脱却のきっかけになったことになる
・インフレの制御可能性の問題
・財政規律弛緩の問題


積極派にしてみれば、日銀の国債引き受けでレジーム転換が生じればデフレ脱却できるし、仮にレジーム転換が生じなければシニョリッジを得られ、財源として機能することになる。従って、どちらに転んでも損は無い、と考えられる。


一方、消極派にしてみれば、日銀の国債引き受けでレジーム転換が生じれば、シニョリッジは得られないので財源として機能しないことになる上*1、その場合にインフレを充分に制御できるかについては疑問が残る。また、レジーム転換が生じなければ、単に日銀の信認を低下させるだけに終わることになる。いずれの場合も、将来の財政にとって規律の弛緩という禍根を残す。


こうしてみると、基本的には従来のリフレ派対反リフレ派の構図と同じであるが、震災対策の財源という問題が喫緊の課題として浮上したために、軸が一つ付け加わった(ないしこれまでは副軸的な存在だったのがもう一つの主軸として存在感を高めた)格好になっている、というのが現在の状況と言えそうである。

*1:[5/8追記]これに対し、経済が成長して税収が増えれば財源として機能したことになるのではないか、というA.R.Nさんのブログエントリでのコメントを頂いたが、ここではそうした間接的な効果は考えず、岩本康志氏がここで論じたような直接的なシニョリッジの話のみを念頭に置いている。確かに税収が増えれば償還の手当てができることにはなるが、その償還に充てた税収のうちのどれだけが国債引き受けによるリフレ効果のお蔭かを決めるのは容易ではない(少なくとも、全部がそうだと言い切るのは異論が多そう)。