2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

共変数と統計的有意性

Marc BellemareがMetrics Mondayで以下のようなことを書いている。 Those of us who do applied work for a living will have at some point noticed that, depending on which variables we include in X on the right-hand side (RHS) of an equation like…

生産性の伸びは重要ではなくなっているのか?

アデア・ターナーが、近年の生産性の伸びの停滞からするとソローパラドックスはますます強まっている、と表題のProject Syndicate論説(原題は「Is Productivity Growth Becoming Irrelevant?」)で論じている。そして、投資の低迷*1、技能の不足、インフラ…

これまでの生産性低迷についての考えは完全に間違っていたかもしれない

潜在生産力は言われているほど落ちていない、という議論が米国では盛んになってきているようで、昨日エントリで紹介した論文のほか、こちらのルーズベルト研究所の論文でも、同研究所とCUNYを兼務するJ.W. Masonがそうした主張を展開している。そのMasonの主…

潜在生産力推計の景気循環要因への感応度

21日エントリでは、景気循環要因を考慮しても大不況後の生産の伸びは低い、という主旨のNBER論文を紹介したが、一時的な景気循環要因も現行の潜在生産力の推計に影響を与えている、と主張する表題のNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The Cyclic…

移住が問題になる時の景気後退と死亡率の関係の評価

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Estimating the Recession-Mortality Relationship when Migration Matters」で、著者はVellore Arthi(エセックス大)、Brian Beach(ウィリアム・アンド・メアリー大)、W. Walker Hanlon(NYU)。 以…

マリエルの件はもうちっとだけ続くんじゃ

カストロ死去の報を受けて「Good riddance!」と気を吐いたハーバード大のGeorge J. Borjasが、「Still More On Mariel: The Role of Race」というNBER論文を書いている(ungated版)。 以下はその要旨。 Card’s (1990) study of the Mariel supply shock rem…

企業の政治理論に向けて

というNBER論文(原題は「Towards a Political Theory of the Firm」)をジンガレスが書いている(ungated版)。 以下はその要旨。 Neoclassical theory assumes that firms have no power of fiat any different from ordinary market contracting, thus a …

高齢米国人の転倒の衝撃

というNBER論文が上がっている。原題は「The Shock of Falling Among Older Americans」で、著者はInas Rashad Kelly(CUNY)。 以下はその要旨。 Direct medical costs associated with falls have been shown to be $34 billion in 2013, an underestimate…

非対称的な政策

クリス・ディローが、量的緩和の実施と巻き戻しの効果は非対称的である、というGavyn Daviesの2ヶ月前の記事にリンクしている。 以下は同記事の一節。 ...the effect of balance sheet tightening may be offset by the Fed adopting an easier path for sho…

ソローが見る米経済の問題

ロバート・ソローがEquitable Growthのインタビューで現下の米経済で最も重要な3つの問題を問われて、以下を挙げている。 数字上の格差 所得や富の規模や分布における格差。 課税の累進性が低下しているので、それを高めることが課題。 広義の概念上の格差 …

「低成長の犯人は全要素生産性と労働参加率だ」「循環的要因をきちんと考えたかね、ワトソン君」

金融危機後の成長が鈍いということは米英の経済学界で盛んに議論されてきたところであるが(cf. 潜在GDPの低下の議論や、直近では緊縮策の影響を論じた議論)、ロバート・ホールやストック=ワトソンがこの問題を扱ったNBER論文を上げている(ungated版)。…

ポピュリズムとグローバリゼーションの経済学

というNBER論文をダニ・ロドリックが上げている(原題は「Populism and the Economics of Globalization」;ungated版、VoxEU記事)。 以下はその要旨。 Populism may seem like it has come out of nowhere, but it has been on the rise for a while. I ar…

正統派経済学か否かをどこまで気にすべきか?

14日エントリと16日エントリで紹介したガーディアン紙記事を巡る議論にクリス・ディローも加わり、以下のように書いている。 For me, there seems to be a presumption here which both sides seem to share but which I don’t – or at least that I don’t c…

クルーグマンが速水総裁を称賛した時

クルーグマンをリフレ派の開祖と呼ぶのが適切か、というツイッター上の議論を目にしたが、そこでuncorrelated氏は、量的緩和を偏重するか否かをクルーグマンといわゆるリフレ派との違いとして挙げていた。確かにクルーグマンはバーナンキを量的緩和偏重と批…

いかにニューケインジアン経済学はケインズを裏切っているか

というEvonomics記事が上がっている(原題は「How New Keynesian Economics Betrays Keynes」、H/T Mostly Economics)。ロジャー・ファーマーの以下の本からの引用との由。Prosperity for All: How to Prevent Financial Crises作者: Roger E. A. Farmer出…

経済学の批判者が見逃しているもの

14日エントリで小生は、ガーディアン紙の経済学批判記事を取り上げ、最近の潮流からすると今更感のある記事、と評した。小生の言う最近の潮流は、主にノアピニオン氏が以前にブルームバーグ論説で紹介した経済学の傾向を指していたが、当のノアピニオン氏が1…

裏切りの新たな気候

クルーグマンが、ロシアゲートについてトランプを擁護する共和党の動きを受けて、9日エントリで紹介した分離独立に関するブランコ・ミラノビッチの考察を基に、国の分裂は米国も他人事ではない、という懸念を表題のエントリで示している*1。 ...So why has p…

いかにして経済学は宗教となりしか

というガーディアン紙記事(原題は「How economics became a religion」)をMostly Economicsが紹介している。同記事はケンブリッジに籍を置くJohn Rapleyの以下の近著からの抜粋との由。Twilight of the Money Gods: Economics As a Religion and How It Al…

なぜ緊縮策を伴う不況は恒久的な影響をもたらすのか?

表題のエントリ(原題は「Why recessions followed by austerity can have a persistent impact」)でサイモン・レンールイスが、ここで紹介した6/5エントリを受ける形で、緊縮策が経済に恒久的なインパクトを与えるメカニズムについて考察している(H/T Eco…

アジアの嬉しくない記念日

アイケングリーンが、アジア危機のきっかけとなったタイのバーツ暴落から今月で20年目になることを表題のProject Syndicate論説(原題は「Asia’s Unhappy Anniversary」)で指摘している(H/T Mostly Economics)。そこで彼は、危機後の4つの変化を挙げてい…

かつて正しかった理論

「Formerly True Theories (Wonkish and Self-Indulgent)」と題したエントリでクルーグマンが、かつては正しかったが、それを生み出した背景ゆえに成立しなくなった理論の例として以下を挙げている。 マルサス経済学 人口圧力が生産性の利得をすべて吸い上げ…

保守派知識人の黄金時代はいつだったのか?

と題したブログエントリでクルーグマンが、以下の4項目について保守派の考え方を腐し、彼らの黄金時代など無かった、と一蹴している(原題は「When Was The Golden Age Of Conservative Intellectuals?」)。 マクロ経済学 フリードマンと初期ルーカスが、積…

分離独立の経済学

カタルーニャ州独立運動の住民投票のニュースを受けてと思われるが*1、ブランコ・ミラノビッチとタイラー・コーエンが分離独立に関する論考を書いている。 ミラノビッチは専ら、このテーマで良く引用される論文に対する批判を繰り広げている。 Twenty years …

経済理論:限界と偏向

というブログエントリ(原題は「Economic Theory: Limitations and Biases」)でTimothy Taylorが、2日エントリで紹介したアーノルド・クリングの経済学論を読んで、別の経済学者の議論を想起している。 As I try to piece together my own views on these t…

情報が内生的な逆選択下の競争的保険市場における均衡

というNBER論文をスティグリッツらが書いている(ungated版)。原題は「Equilibrium in a Competitive Insurance Market Under Adverse Selection with Endogenous Information」で、著者はJoseph E. Stiglitz(コロンビア大)、Jungyoll Yun(梨花女子大)…

トランプ関税は有効か?

クルーグマンがトランプの関税政策を批判するNYT論説を書いた*1ところ、ディーン・ベーカーがクルーグマンに異を唱えた(H/T PGL@Econospeak*2)。以下はベーカーの主張の概要。 貿易赤字は問題*3。それを是正する通常のメカニズムは為替調整(ドルの減価)…

シアトル最低賃金騒動

最低賃金引上げと雇用の関係は経済学で最もホットなトピックの一つであるが、先月出されたシアトルの最低賃金引上げに関する研究(NBER論文、そのungated版)が話題を呼んでいる(cf. 山口慎太郎氏の日本語ブログ記事による紹介)。論文のタイトルは「Minimu…

経済学に取り込まれた経済史

ボストン大学のRobert A. Margoが「The Integration of Economic History into Economics」というNBER論文を上げている(AEAサイト版)。 以下はその要旨。 In the United States today the academic field of economic history is much closer to economics…

なぜある移民集団は他よりも成功しているのか?

というNBER論文をエドワード・ラジアーが上げている(原題は「Why Are Some Immigrant Groups More Successful than Others?」)。 以下はその要旨。 Success, measured by earnings or education, of immigrants in the US varies dramatically by country …

経済理論はどこまで有効か

というエッセイをアーノルド・クリングがNational Affairsに書いている(H/T Mostly Economics、原題は「How Effective is Economic Theory?」)。 そこで彼は、物理学者のリサ・ランドールの有効理論の考え方を経済学に当てはめている。 Instead of "scienc…