表題のエントリ(原題は「Why recessions followed by austerity can have a persistent impact」)でサイモン・レンールイスが、ここで紹介した6/5エントリを受ける形で、緊縮策が経済に恒久的なインパクトを与えるメカニズムについて考察している(H/T Economist's View)。
そこで彼は、低迷する需要に合わせて供給が調整されてしまう原理として履歴効果を挙げ、以下のように解説している。
- 供給は労働参加率、生産資本、技術進歩に依存するが、需要不足が長く続くと労働者は意気を沮喪し、投資は手控えられる。
- とりわけ技術進歩を通じた影響は重大で、内生的成長理論で精力的に研究されている。例:
- Antonio Fatas…単純なAKモデル
- Gianluca Benigno、Luca Fornaro「Stagnation traps」…より洗練された技術進歩のモデル
- 掻い摘んで言うと、不況下ではイノベーションの利益率は下がるため、企業はあまりイノベーションを行わなくなり、それによって生産性成長率が低下し、供給も低下する。コチャラコタがこのアイディアを推進している。
その一方で彼は、供給が低迷する需要に合わせて調整されてしまっている、という上記のような説明もさることながら、需要不足が続いている、という説明も魅力的、としている。その一つの理由は、需要を供給に近付けるメカニズムである金融政策がゼロ金利下限*1によって機能停止状態に陥っているからである。だが、少なくとも英米では失業率が危機前の水準に近付いていることを以って、この説明は現在は当てはまらない、とする向きもある。それに対しレンールイスは、以下の3つの点を指摘して反論している。