アジアの嬉しくない記念日

アイケングリーンが、アジア危機のきっかけとなったタイのバーツ暴落から今月で20年目になることを表題のProject Syndicate論説(原題は「Asia’s Unhappy Anniversary」)で指摘している(H/T Mostly Economics)。そこで彼は、危機後の4つの変化を挙げている。

  1. 危機を経験した国は投資率と期待成長率を持続可能な水準まで引き下げた
    • アジア各国の政府は依然として成長を重視しているが、いかなる犠牲を払っても、とまでは言わない。
  2. 東南アジア諸国は今やより変動的な為替相場になった
    • 確かに完全な変動相場制ではないが、少なくとも、1997年時点の脆弱性の原因となった厳格なドルペッグ制は放棄した。
  3. タイなどのかつて巨額の対外赤字を計上していた国は、今や黒字を計上している
    • かつての赤字は海外金融への依存を象徴していた。現在の黒字により外貨準備の蓄積が可能になったが、それは一種の保険の役割を果たす
  4. アジア諸国は地域間の連携を強化している
    • 危機後の2000年には、金融のクレジットやスワップの地域ネットワークであるチェンマイイニシアチブを創設した。今は開発向け金融を地域で提供するAIIBがある*1

アイケングリーンはさらに、この20年で最大の変化は中国の台頭だが、同時に中国は上記のかつてのアジアと同じ旧弊(高い投資率に依存した成長第一主義、そのための政府の無制限の流動性の供給、オフショア規制の急激な緩和による企業の対外債務の積み上がり、変動相場制への抵抗)に囚われている、と指摘している。

*1:アイケングリーンは、中国がまだ地域内の地位を確立していなかった20年前に日本のAMF構想に賛成しなかったことを指摘している。